KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

クライマックスって何?食べれるの?

今日はさっさと小説に移ります。というのも仕事でちょっとトラブルがあり、残業で疲れ果ててしまいました(××)あまり長々と書き綴る気力がありません・・・。とりあえず原稿を落とさなかっただけでご勘弁くださいm( _ _ )mペコリ

というわけで毎度のことですが、前回までの小説は毎週日曜のブログをご確認ください。

それにしても当初全13回で終わる予定だったのが、いよいよ今日で12回。でも話は一向にクライマックスに向かう気配がありません(-。−;)というわけで、この先何回続いて終了になるかは神のみぞ知るというところですが、作者としては年内中に終わらないかなーと思っています。最近「筆」ならぬ「キー」が進まなくなってきました。ネタはあるんですけどねー・・・


                       台風一過

第十二節 紀末的な新世紀

世の中(といっても感染地域のみであるが)は、終末的、退廃的なムードが広がりつつあった。まず薬物汚染の拡大が始まった。皆せめて薬で現実逃避を図ろうとした結果だ。様々な宗教家も現れ、説法を説いて回る。自暴自棄から端を発した暴動や暴走行為も散見されているようであるが、それらは同時にウィルス感染者と見なされ、自衛隊や警察から排除の対象として見なされていた。治安の悪化は火を見るよりも明らかだった。

私はというと家にいて大人しくしている他はなかった。家族を守るという心配がない分、身軽といえば身軽だ。一時期携帯電話を始めとする通信網は、身内の安否を心配する家族からの通信が殺到したためかなり不安定な状態になっていたが、国民の落ち着きと共に徐々に回復しつつある。私も非感染地域である実家と友人知人、それから藍への連絡は無事とれた。皆それぞれ無事を確認でき、それぞれほっとする。

家に居てすることといえば、ニュースを見ることとインターネットで外の状況を探ることだ。天気予報では花粉症の季節の花粉情報さながらに、ウィルスの分布状況や拡散状況を伝えている。湿度の高い日は感染率も高いらしい。お昼のテレビでは体に良い食べ物を連日日替わりで紹介しているが、さすがにウィルスに効く食べ物は紹介のしようがない。いざという時に役に立たないものだ。

ニュースを見ていると連日のウィルス絡みの報道と、ちょっと変わったニュースが見られた。奇妙な事に結婚率が上昇しているとのことである。人生の最期を覚悟し、最期は最愛の人と・・・という気持ちもあるだろう。丁度戦時下で出兵前に結婚をするという行為に似ているかも知れない。

私は将来、藍との結婚を前提に付き合ってはいるが、どうもこのタイミングで結婚を申し込むのは世の中の流れに便乗しているようで嫌だ。タイミングも自分で見つけたいと考えているし、もう少しお互いを理解してからでも遅くはないのではないかと思っている。

一方藍の方はどう考えているのであろう?付き合い始めてから2年は経過しているが、今のところそのような話は出たことがない。いや、彼女が出すサインに私が気づいていないだけかもしれない。ともあれ、お互いにいい歳であるから結婚を意識していないはずはないと思う。後は私がどれだけ甲斐性を持って当たれるかだが・・・

突然外で爆発音が聞こえた。どうやら停めてあった車に誰かが火をつけたようであった。それがガソリンに引火して爆発する。窓を開けずに外を覗いてみると、恐らくは火をつけた当事者が車と一緒に燃え上がっていた。爆発に巻き込まれたのだろう。彼もしくは彼女はキャリアだ。今の世の中そう考える方が自然である。

私は焦りながらすぐ携帯で110を押した。いや、119の方が先か?一瞬悩んだ末、結局はどちらを押したか自分でもわからない。しかし聞こえるのは「ただいま混み合っております」という機械的な音声のみであった。両方何度かリダイヤルしてみたが、結果は変わらなかった。

さすがにキャリアでも痛みは感じるようだ。もがき苦しみながらやがて倒れ込み、やがてそのまま動かなくなった。火は尚も勢いが治まる様子はない。ただ私は外に駆け出して人命救助にあたろうとは思わなかった。やはり感染が怖い。今燃えている人物がキャリアである可能性が著しく高い以上、むやみやたらに近寄るのは危険である。ミイラ取りがミイラになるとは正にこのことだ。私の他にも窓から傍観している人々も同様の考えに違いない。ただ、自分の家に延焼しては困るので、消火の準備だけはしているようであった。

結局黒煙を上げて燃え続けていた車と人は誰にも消火されることなく、可燃物が燃え尽きて自然鎮火した。物理的な被害は車と、近くの塀が黒焦げただけである。車の所有者は一体誰であるかわからないが、もし窓から覗いているとしたらさぞ無念であるに違いない。私は車について良く知らないが、エンブレムは有名な外車のものであったから。元々黒いボディであったが、今ではツヤも出ないくすんだ黒だ。その傍らには先ほどまで有機物であった無機物が同じく黒く転がっている。最早この距離からではかつて人間だったとは思えない程だ。

今回の体験は私にとって初めてであった。つまり、キャリアの恐ろしさをまざまざとこの目に見せつけられたのは、である。やはり実際に身近に起こってみるまでは心のどこかで対岸の火事だと思っていた点は否めない。窓越しに見る風景はテレビで見る風景と異なっていた。リアリティがあるのだ。これだけ高画質な映像が手に入る時代においても、やはり目の前の光景と映像で見る光景は大きく違う。今更ながら自分が置かれている状況に不安を感じた。着実にウィルス被害は拡大している。ついにそれは私の身の回りまでにだ!

そして更に恐ろしいのはこの事態に私も含めて第三者は傍観者を決め込み、積極的な関与を拒んだ事実である。つまり、以後このような事態が起き、自分の所有物が被害に遭おうが誰も助けてはくれない。いや、所有物だけならまだ良い。今回のキャリアはたまたま自爆してくれた結果、私には何の実害もなかったが、もしキャリアが私の部屋の玄関をぶち破り、入り込んで来たとしても助けを求める手段は何もない。隣近所は私の悲鳴を聞けばより一層扉を堅く閉ざすだけのことだろう。

そうなってくると後は自分で身を守るだけである。だが一体どうやって?殺られる前に殺るしかないのか?この緊急事態に対応した法整備はされていない。すなわち自衛隊や警察は治安維持の名の下、キャリアと思われる人間の殺戮は親方日の丸に認められているが、民間人にはその行為は認められていない。それを認めると事実上どんな殺人でも許容されてしまうからだ。何故なら目撃者は少ないだろうし、証言者も現れてこないから。

考えれば考える程まとまらなくなり、次は一体何をすれば良いのかわからなくなる。私でさえそうであれば、同じく一人暮らしをしている若い女性の藍が不安がらないわけがない。藍が心配だ、藍に電話をしてみよう・・・というのは体の良い口実で、実際には自分の不安を藍に包んで欲しかっただけなのかも知れない。

これが超能力だとは思わないが、携帯をかけるより早く藍から着信があった。すかさず電話をとる。私が声を発するより早く藍の声が耳に届いた。ひどく焦った様子であった。(つづく)