KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

弱り目に祟り目

今真剣に視力回復手術を受けたもんかどうか悩んでいます。私の視力は0.1無くメガネをかけていますが、やっぱりメガネは曇るし、細かいゴミとかついたら拭き取らないといけないし、風呂とか入る時に外してしまうと見えなくなるし・・・と結構面倒臭いんです。コンタクトって手もありますけど、やっぱり装脱着が面倒くさい。それならいっそ視力回復手術を受けてしまった方が良いのではないかと。今後人生で何回メガネを買い替えるかわかりませんが、トータルでは逆に安上がりになるのではないかと。

でもやっぱりいざ手術となると怖いもんです。実際に受けた人間が周りに数人いるんですけど、「目にメスを入れられるよ」と聞いて臆してしまいました。何かレーザー的なもんでピピッとやって終わりだと思ってたんですけど・・・。おー怖っ。

ただ値段的には随分リーズナブルにもなってきたし、これだけ受ける人が増えてきたのなら、やっても良いかなーって感じがしています。

事前に色々調べているのですが、よくあるマイナス点は「夜間に鳥目になる」「手術が始まってから10年程度しか経ってないから、手術を受けた人が老眼になった時にどのような症状が出るか例がない」ということらしいです。むむむむむ。とりあえずもう少し様子を見てからまた検討してみようと思います。早くレーザー的なもんでピピッとやって終わりの時代が来ないもんかなー・・・

さて、今日は日曜なので小説の日です。前回までの分は毎週日曜のブログを参照してください。


                        正義のみかた

※この作品はフィクションであり、実在する、人物・施設・団体とは一切関係ありません

第十四章 白濁した過去

「いや、応え辛いようでしたら結構です。職業柄気になったといいますか・・・」
空気に耐えかねた私は弁解めいた口調で話を終わらせようとした。

「いえ・・・実はあいつと別れた原因を作ったのは私なんです」
ようやく意を決したように雄三氏が言葉を発する。
「怪我の事は聞いています。ですがそこまでご自身を責めなくても・・・」
「そうではないんです。私の仕事がなくなったから別れたわけではないんです」
「と言うと?」
少し間が空いた。私は唾を飲み込みたくなるのを我慢した。
「私の女性関係が根本的な原因でして・・・」
初耳だ。
「私は前の会社で同僚と不倫関係にあったのです。静香はそれに気づいていました。気づいていながらも敦や玲子が産まれたばかりだったので、我慢してくれていたようです。」
「なるほど。では仕事がなくなったから別れたというのはきっかけに過ぎず、本質はあなたの浮気であったと?」
「恥ずかしながら・・・」

私は少し白けてしまった。なんだ自業自得じゃないか。同情を寄せていたのがアホらしくなった。しかし彼は依頼人で私のお客さんだ。顔には出さず話を続けた。
「で、敦君はその話知っているんですか?」

しばらく迷った後に決心したように、いや、諦めたようにという言い方が正確かも知れないが雄三氏は続けた。
「・・・いえ、あいつにも玲子にも言っていません」
「では敦君の中では静香さんが一方的に悪者ですか」
少し言葉が過ぎているか?しかしここは明確にしておきたいところだった。

「私は全ての責任を静香に押し付ける事によって、母親の蒸発を子供達に理解させようとしました。どうせあいつは敦達の目の前には戻って来ない。それならば余計な事を語る必要はないと。」
子供達にしてみれば父親の話は理解し易い。静香さんは消える寸前まで我が子に暴力を振るっていたのだから。子供達の中にも「母親が憎い」「母親が悪い」という印象が残っているに違いない。しかしそもそも静香さんが暴力を振るうようになった原因の一端は雄三氏にあるようだ。「憎いあの人の子供!」と理不尽にねじ曲がった感情に支配された結果ではないだろうか?

「当時静香に浮気を問いつめられ、私は開き直って静香を殴った事もありました。慰謝料は言ってしまえばそれら全てを含めて支払っているもの。口止め料という言い方すらできるかも知れません」
「その話によってあなた方父子の絆が生まれたのかも知れません。しかしそれで増幅された母親への憎しみが結果として今回の事件を発生させる一因になったという事にはなりませんか?」
「・・・」
雄三氏はただうつむき黙っていた。やがて鼻をすする音がした。
「結局仕事を無くしたと同時にその同僚にも見放され、その時ようやく静香や家族の大切さ、大事さ、そして掛け替えのないものを失った事に気付いたんです。馬鹿でした。失うまで気付かないなんて・・・私は救いようの無い大馬鹿者です。」
今まで誰にも話せなかった思いをようやく吐露できた雄三氏は言葉を詰まらせながら懺悔し続けた。
「でもまさかこんな事にまでなるなんて・・・私がいけないんです。私が。ですから若葉さんへの補償も私が出来る限りやらなければいけませんし、敦と私が替われるのであれば替わってやりたい・・・」
目の辺りを何度も擦りながら、うつむき肩を震わせながら雄三氏は続けた。
「だから弁護士さん、お願いします。敦を、敦を宜しくお願いします。あいつがこれ以上苦しまなくて済むように・・・」
そこにはかつて妻に拳を挙げた男の姿はなく、ただ頼りない、哀れで救いを求める男の姿だけが見えた。すがるような声を聞いて私は返す言葉が見つからなかった。

明日またこちらのアパートに来る約束を取り付け、今日のところは一旦引き上げる事にした。帰り際私が玄関から振り返っても雄三氏はまだテーブルの前でうつむいたままだった。アパートの前に止めておいたアリトに乗り込む。まだ覆面パトカーは来た時と同じ場所に止まっていた。私は「お疲れ様」の意味を込め軽く会釈をして通り過ぎた。彼らはつまらなそうに正面を向いたまま表情一つ変えなかった。

私は真っ直ぐ事務所に戻らず、少しドライブしながら頭の中を整理しようと思った。この頃ずっと働き尽くめだったのだ。少し位サボったって良いだろう?

運転しながら考えた。結果的には雄三氏にとっては思いがけない方向へと話が進んでしまったが、わざわざ自分が浮気をしていた事を子供に言う親なんてどこにもいない。しかし一方の静香さんが浮気して蒸発した事実だけは子供達も知っている。もしこのアンフェアが解消されたら、つまり敦君がこの事を知ったらどう思うのであろう?怒りの矛先は父親へと向かうのであろうか?全体としてはそれが筋かも知れないが、それはあまりにも救いようがないのではないか?結局は憎しみの対象を一人増やすだけのことで今更何も変わらないのではないか?

いずれにせよそれは当事者同士の問題である。私の口の挟むところではない。今回はとにもかくにも引き受けた事件の弁護のみが私の仕事なのだから。熊さんの言うように余計な部分まで首を突っ込むべきではない。

いつの間にか夕方近くになっていた。いい加減戻らないとな。沈む夕陽に向かってアリトを走らせると目がやられそうになったのでサングラスをかけた。世の中見えすぎると困る部分がある。適度に見えない位が丁度良い。赤く染まった世界、暗く沈んだ世界、どちらが良いのかはわからないが、少なくとも今の私にはどちらかを選びうる自由があった。