KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

一夜限りのブルジョワ体験

ちょっと自慢して良いですか?昨日は誕生日だったということで、贅沢なディナーをいただきにあがりました(^^)

私は普段一人暮らしの質素な自炊の食生活を送っているのですが、今宵限りの別世界。和食の豪華絢爛な料理が次々と運ばれてきます。

↓金田中「草」HP
http://www.kanetanaka.co.jp/so/index.html

季節によりメニューが異なるらしいので、HP上のメニューとは一部異なっているようなのですが、およそ考えうる高級食材のラインナップでした(フォアグラ、フグ、アワビ、ウニ、タラバ蟹、和牛、スッポン・・・)。ある意味巨人打線みたいですね(;^_^A

先日のイクラといい(今回にもやはり付いていましたが)、最近有り難い事に「食」に不自由する事がないですね。幸せ者です(^^)

ただ、アワビやフォアグラは私的には「まあそんなに高い金出しても食うもんじゃないな」というのが正直な感想です。とりあえず今後5年位は食べなくても良いですかね(;^_^A

それにしても普段からこんなのを食べてるのってどんな人でしょう?それこそ医者とか弁護士とかでしょうねー。ガキんちょも食べていましたが「お前らに食わせる飯じゃねー」と心の中で毒づいてきました(-。−;)

さて、本日は日曜なので小説の日です。前回までの分は毎週日曜のブログを参照してください。


                            正義のみかた
※この作品はフィクションであり、実在する、人物・施設・団体とは一切関係ありません。

第十六章 ホワイトアウトから飛び出して

「2時間はここで待機してください」
我々に目を合わせないようにして隣の席に陣取っている私服警官が指示した。彼らも敦君がここに現れる可能性を強く感じているらしい。雄三氏は「はい」と返事をし、静香さんは「はぁーっ」とこれ見よがしにでかいため息をついた。敦君に似ているな、いや、敦君が母親に似ているのか。彼女のため息を見てそう感じた。

愛が消えてしまった二人にとって喫茶店で過ごす2時間は何と長いことか。恐らくは赤の他人とでも相席していた方がまだマシではなかったか。そんな両親の心中を察する事もなく、敦君は未だ姿を見せる気配がなかった。

30分が経過した。すっかりクリームスパゲティを食べ終えた私のテーブルには間を繋ぐために注文されたアイスレモンティーが運ばれてきた。特に会話をするでもない夫婦、その隣でアイスレモンティーをすする中年、更にその隣にはイヤホンをしながら険しい顔で手帳を眺める男性。他に客のまばらな店内でウェイトレスが怪訝そうな目つきで立ち去っていくのも致し方あるまい。

その時突然私服警官に緊張が走った。彼は手帳を閉じるとゆっくりさりげなく店外に目線を向けた。どうやらイヤホン越しに新たな情報が入ってきたようだ。敦君らしき人物が発見されたのだろう。私はそう読みとった。

私は喫茶店の外に目線を走らせた。外にはもう一人の私服警官がスーツ内に仕込まれているであろうマイクに小声で話し続けていた。その視線の先には・・・

いた!敦君だ。少し遠くにいるために今はまだはっきりと確証が持てないが、まず間違いない。多少服装に気を遣って変装しているつもりか。キャップを深く被り地味なTシャツ、それにジーンズ姿。だが体格や歩き方までは変えようもない。彼だ。

雄三氏や静香さんはまだ気づいていない様子だ。いや、実際には雄三氏は気づいているのかも知れない。気づかぬふりをするよう指示されていたから、名演技を続けているのかも知れなかった。少なくとも静香さんからは死角に入るため彼女は気づいていないはずだ。

警官達はもう少し彼を引き寄せてから捕獲に入るつもりのようだ。まだ次のアクションに移ろうとはしていなかった。私もそれには同意見だった。今の距離ではまだ逃げられる。できるだけ近くに、できれば店内に入って来て逃げ場のないところで確保するのがより確実性を増す。それまで引きつけられるだけ引きつけたい、そう考えているはずだ。

敦君が周りを気にしながらも少しずつ近寄って来る。私は小銭をさりげなく財布の中から確認し、音を立てないよう伝票の横にそっと置いた。そして彼が喫茶店の入り口まで残り数歩の距離に迫りかけた時・・・

私は弾き出されたようにイスから立ち上がり、喫茶店の入り口に向かって駆け出した。突然の行動に小山元夫妻、私服警官が一斉に私に注目する。喫茶店の入り口では会計係のウェイトレスが食い逃げかと思い裏返った声で「ちょっ、ちょっと、お客様!?」。私は振り向き様「勘定はテーブルに!釣りはいらない!!」と叫んで入り口のドアを勢いよく開けた。ドアに付いていたベルがもっと静かに開けろよと抗議の音を上げ、ドア付近を歩いていた母娘が驚いたように飛び退いた。

「おい、待て!!」
後ろから警官の呼び止める声が聞こえた。と同時にテーブルに足をぶつけたような音、その衝撃でアイスコーヒーをグラスごと倒した音も続いた。「あぁっ!」と背広にコーヒーのかかった警官の嘆きの声も追加された。呼びかけは私に言ったとしても敦君に言ったとしても流れ的にはおかしくなかったが、今回はおそらく私に向けられたのであろう。彼らとしてはもう少し引きつけてから動きたかったのだ。それを「ド」が付く程の素人である弁護士風情がぶち壊したのだ。

変装用のメガネを放り出して走り寄ってくる私の姿に気づいた敦君は今来た通路を引き返し、奥のエスカレーターへと向かって走って逃げた。周りにいたデパートの客は騒然とした。休日の家族での買い物、楽しい一時を破壊するのは誰だ?悲鳴がフロアの一画に上がり、それによって我々の注目度は増した。

今や先頭に敦君、それを追い掛ける私、そして出遅れた警官達という順で鬼ごっこが開始されたのである。鬼に捕まったからといって攻守交代するわけでもない。鬼は一人でもない。一回限りの真剣な大人の鬼ごっこだ。後の体力温存等を考えず、各々全力で走り続けた。

私の活路はここしかなかった。というのは最終的には警官達を振り切って、私と敦君だけの追いかけっこになる→私が敦君を捕まえる→その後二人で警察を振り切り、見つかる前に何としてでも説得して警察に連れ戻す、というシナリオだ。前半が上手くいったとしても後半きちんと説得に応じるかどうか、そこはまた次の問題点であるが、何にせよまずは警察に捕まえられる前に私が単独で捕まえなければ話は始まらない。可能性は極めて低い。しかしこれが今の私に考え得る最良の選択肢であった。

そのため私は奇襲戦法に打って出たのだ。警官達はもう少し射程範囲内に敦君が入ってきてから捕まえるつもりであった。私はその少し手前で、かつ、最終的に敦君を捕まえられるギリギリのラインで飛び出さなければ目的を達成する事ができなかった。桶狭間、真珠湾、歴史を彩る奇襲作戦の何十万分の一のスケールであろうか?

敦君は16歳、私は運動不足の三十ウン歳。いくら学生の頃、クラスの男子の中では短距離走4番目だった私もこのまま走り続けると差はドンドン開いていくはずだった。しかし先頭を走る敦君は道無き道を切り開く先達の苦難、すなわち人の群れをかき分けていかないといけないハンデがある。差は少しずつだが詰まってきた。