KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

想像力を持って

先週も書きましたが、あれから一週間いじめ自殺報道が絶えません。毎日のように誰かの命が絶たれています。私はやはり「自殺が一番の罪」だと思うので最近の自殺報道に変に勇気付けられず、そして仲間とは思わず、自分の意志をしっかり持って生き続けて欲しいと思います。

私の姪の話になりますが、かなりやんちゃな娘で親もだいぶ手がかかりましたが、今年の春とうとう大学進学で一人暮らしで大阪へと旅立って行きました。向こうで今も宜しくやっているようですが、先日自分の誕生日に一通のメールを母(私の姉)に送ったそうです。

「産んでくれてありがとう」

家に居た時はわがままで「誰も産んでくれと頼んだ覚えはない!」とか言っていた子供が180°転換。姉はものすごく感動したらしく、今までの子育ての苦労が一気に吹っ飛んだようです。

その逆に自殺したらどうか。今までどんなに良い子に育っていたとしても親としては裏切られた気持ちになります。そしていじめた子供を恨むでしょう。親の残りの人生には負の感情しか残りません。最大の親不孝だと思います。

子供が産まれる時の母親の痛み、そして産まれた後の喜び。そういったものに想像の翼を広げ、もし自分の人生に希望が持てなかったとしても、せめて誰かの為に生きる喜びを見つけて欲しいと思います。先週に引き続き無責任な発言だとは重々承知の上ですが、一生いじめられ続ける事はないと思うので希望を持って生きて欲しいと思います。

さて、本日は日曜なので小説の日です。前回までの分は先週のブログを参照してください。


                       正義のみかた

※この作品はフィクションであり、実在する、人物・施設・団体とは一切関係ありません。

第十八章 白紙からの再開

敦君が警察に再び捕らえられてからというもの、私は弁護方針の見直しや作戦変更に忙殺された。逮捕後すぐに敦君へ接見を求めた際、署内であの私服警官に偶然出会ってしまい散々嫌味を言われた。「最終的に我々が身柄を確保したから接見もできるんだぞ」何となく逆説的な発言でもあるが、言い返す権利など私にはなかった。

ようやく会った敦君に今回の騒動の説明を求めたが極めて非協力的だった。何を聞いても「何となく」「そういう気分だった」などと逃走の明確な理由を聞けないまま接見時間が終わった。

それでも足踏みするわけにはいかない私は今度は静香さんに面会を求めた。最初は頑なに拒まれた。何と非協力的な親子であろう!しかし最終的には根負けしたのか「30分だけなら」と返事をくれた。

先方に指定された街の小さな喫茶店で待ち合わせた。今回も私の方が先に到着していた。やがて先日と同じく落ち着いた感じで化粧も薄い静香さんが現れた。「お待たせしたかしら?」嫌味に聞こえるのは良くない先入観だろうか?それだけ言うときまりが悪そうに目線を合わせようとせず、席に着くとすぐにメニューを眺める彼女。おかげで私は声をかけるタイミングを量らねばならなかった。

「敦君の事をどう思っていますか?」
時間もないので私は単刀直入に問いかけた。私の問いかけを無視するかのようにホットコーヒーを注文する。それから十数秒の間を空けてようやく彼女は応えた。
「どうって・・・私の子供よ」
「それだけですか?」
「ええ、それだけよ。他に?」
それだけ言うと静香さんはタバコを取り出し火を付けた。何を言いたいの?この弁護士は。そういう雰囲気をありありと感じた。その態度が私をイライラさせる。
「あなたの子供が殺人事件を犯しているんですよ!それだけですか!?」
思わず声を荒げ、腰を浮かしかける。
「ちょっと止めてよ。周りの人が見てるじゃないの!」
私が周りを見渡すと、私と目線を合わせないように周囲の客は視線を戻した。

「すいません。」
「・・・」
静香さんは不機嫌そうに外を見つめながらタバコをふかしていた。
「今日は何?わざわざ私に説教をするために呼び出したの?私だって忙しいの。」
「敦君は今回何故このような凶行に及んだかご存知ですか?」
私は少し声のトーンを落として問いを変えた。
「知らないわよ。もう関係ないし」
ガラスの向こうの国道を大型トラックが排気ガスを撒き散らしながら通り過ぎる。やがて信号が赤に変わって車の流れを止めた。静香さんは私と目線を合わさずに黙っていた。ようやくホットコーヒーを運んで来たウェイトレスが立ち去った事を確認して私は話を続けた。

「敦君に聞きました。若葉さんを狙ったのは母親に似ていたから、つまりあなたに似ていたからだって」
軽く目を見開いてこちらに向き直る。
「何それ?私が憎いって事!?私を殺すつもりだったって事!?」
ようやく前を向いた静香さんの表情は驚きと恐怖と怒りとが等分に混ざり合っていた。灰皿に火を消さないままのタバコが置かれる。

「いえ、あなたを殺すつもりがあったというわけではないと思います」
彼女を落ち着かせるように、私はゆっくりと言葉を選ぶように語を繋いだ。
「ただ衝動的に怒りがこみ上げてきて、自分を抑える事ができなかった。少なくとも私はそう判断しています。殺意の方向がねじ曲がってしまったんだって。今回鑑別所から逃げ出したのも、あなたに会って何かを言いたかった、示したかったからではないか。少なくとも私はそう踏んでいるのです。事実、あなた達が会っている喫茶店に敦君は姿を見せた」
静香さんは私が話している間、黙って手元のスプーンでコーヒーを闇雲にかき回していた。

目線を離さずに私はそのまま続けた。
「翻ってあなたはどうなんですか?敦君が憎かったんですか?だから暴力を振るっていたんですか?」
空気が一瞬にして変わったように肌で感じられた。静香さんの表情が曇る。
「憎いって・・・そんなわけないじゃない・・・」
スプーンが受け皿に落ち、鋭い音をたてた。静香さんの目からは大粒の涙がこぼれ落ちる。鼻をすする。突然の感情の変化に私はとまどった。元々気性の激しい人なのかも知れない。また周囲の客の視線が私たちに集中する。痴話喧嘩でもしているように見られているのだろう。

「敦はね、私がお腹を痛めて産んだ子供なのよ。私たち、玲子の次は男の子が欲しかったの。丁度男の子を身籠もったと聞いて雄三と二人で喜んだものよ」
静香さんがようやく自発的に発言しだした。

「雄三の浮気の話は聞いてるでしょ?何かね、私バカバカしくなったの。あれだけ二人で子供の誕生を喜んだのに、結局それって何だったの?って。嘘だったの?って。これから幸せな家庭を作ろうと思っていたのは私だけだったの?って」
私は黙って聞いていた。一口も口を付けられないまま放置されているホットコーヒーからは既に湯気が上がらなくなっていた。灰皿からはタバコの煙が上がり続ける。

「元気も良いし、保育園の運動会の時でもね、周りのどんな子よりも足が速かったわ。素直な良い子だった。私はあの子に期待していたのよ。」
先日の追走劇で彼の足の速さは私も身に染みて知っていた。

聞きながら梓の事をふと思い出してしまった。梓も女がてらに足の速い子だった。女子陸上界期待の星になれるんじゃないかと考えた事もあった。それなのに梓の輝かしい未来と親馬鹿の期待は一人の少年によって奪われてしまった・・・

「どうしたの?泣いているの?」
思い出したように灰皿にタバコを擦りつけて静香さんが私に問いかけた。私も気付かない間に涙が零れ出ていた。
「い、いや・・・何でもありませんよ」
「何でも無いことは無いでしょ?」
「実は私にも一人娘が居ましてね・・・」
そこから私は私の身に降りかかった不幸な出来事を語った。静香さんはそれを聞いて驚き、力を落とし、そして最後に泣いた。二人の男女が泣いている姿に三度客の視線が集まった。しかし我々は最早それが気にならなかった。