KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

イー・ガーディアン(6050)のアナリストレポート

3ヶ月以内投資判断「未付与」(短期的なブレが大きいため)
買いのタイミング  週明け後の動きを見て判断
3ヶ月以内株価予想レンジ 3000円〜8000円

要点
・需要は旺盛。急激な成長過程にある。一方でコストを抑えること、新規顧客の開拓が課題。
・話題のIPOであり、IPO空白期間を考えると、話題が継続する可能性は高い。既にVCが大半の株式を売却している事を考慮すると、需給は良好。
・同業他社と比較した株価の適正価格は1360円程度。ただし当面は需給が良好な事から下値は3000円程度と見るのが妥当か。


【企業概要】
ネット上の書き込みに対する監視業務。また投稿データの傾向や利用者属性を分析し、マーケティングや企画開発に利用可能な情報を提供するコンサル等も。主要取引先にグリー(3632)、ベネッセ(9783)など。ちなみに創業者は日テレ女子アナ夏目三久の父。本人も1.7%を所有する大株主。

【業績】
業績は小規模ながらも右肩上がりの傾向が続いている。今期も2桁成長が継続の見込み。背景にあるのは事業環境の良さ。足元ではスマートフォンの急速な普及によるTwitterSNSの活況があり、個人が公共的な場に情報を発信し易い環境が急加速してきている。

そんな中でクライアントが求めるのは安定的なサイト運営。ネット社会で瞬く間に炎のように広がる風評やユーザー間のトラブル等は、一つ間違えると社会問題にもなりかねない。従って作り上げたサービスが軌道に乗せて継続的なものにするためには、その辺りを疎かにできない。内製化するよりも低コストで効率的なノウハウを持つ同社のサービスは、正に時代のニーズに合ったものとも言えよう。

その監視により得られるソースから、マーケティング・コンサルという有機的なサービスを提供できるのも同社の強みだ。テレマーケティングのネット版という捉え方をすれば、よりユーザーの本音を聞き出せる手段ということで、一層重宝されるに違いない。

今後も既存メディアとの融合など、更なるコミュニティーサービスの拡大を考えると、需要は否が応でも増してくるだろう。

11年9月第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   620
営業利益 100
経常利益 95
当期純益 55

業界的に特に季節要因は見られないため、売上は純粋に通期見通しの1/4程度の額に納まると見る。その他上場に伴うコスト増などを計上しても、売上の増加により利益率は保たれると思われる。

ネット企業らしく有利子負債は0であり、今回の新規上場で得た資金は最終的に3.6億円。目先3年分の設備投資や新規事業開発等に充てるためとしており、多少の業界環境の変化があったとしても、当面は更なる増資の必要は無いと考えられる。


【業界での同社の強み】
オペレーターのリテラシーが高いとのこと。こういった優秀な人材の確保、また更に育て上げていく事が同社の経営の根幹と言える。


【需給】
新規上場に伴う大株主のロックアップ期間は90日。ただし条項に公開価格の1.5倍を超えるようであれば市中売却可能とあり、事実上ロックアップは解除されている。

実際に筆頭株主であったドリームインキュベータ(4310)は、7日までに保有比率3.9%まで市場にて売却した事を報告。恐らくはその後も残り6万株強を追加売却しているものと思われ、早ければ既に、遅くてもドリーム社の決算である3月末までには全株売却してくるのではないかと思われる。

それでも足元は売り圧力をこなして上昇しているところに強みがあると言える。新規上場特有の「売りしこりが無い」状態は思いがけない株高を誘因する。

一方で値上がりに応じて溜まっている信用買い残は、超短期投資が中心だろう。その分逆回転し出すと逃げ足も早そうで、急速な需給悪化に繋がり易そう。


【同業他社】
同社の予想PERは33.8倍、PBRは14.2倍。営業利益率は15.2%。時価総額は81.1億円。同業他社と比較した時に、同社の立ち位置はどの辺りになるだろうか。


ガイアックス(3775)

名証セントレックス上場。監視業務による売上が6割(同社は8割)。その他はSI事業など。同社と監視業務分野で二巨頭。同社と売上や事業規模などが似ていることを考えると、ガイアックスとの時価総額の比較が同社の適正価値推定に最も適していると思われる。現在ガイアックスの時価総額は13.5億円。

実はiPhoneアプリのレビューサイトが黒字化するなど、テーマ性も多いのがガイアックスの特徴で、なまじセントレックスに居るために埋もれてしまっている。流動性の確保や知名度の高い市場へ移れば、同社の株価はもっと次元の違う水準に移るだろう。なお、今回の同社の新規上場はあまり株価に影響していない。

会社計画が保守的なため、四季報予想で見た予想PERは11.1倍、PBRは2.6倍。自己資本比率は自社株の保有比率も高いため、22.4%と新規上場による増資で70%超となっている同社に比べて低い。監視事業であるコミュニティ事業の営業利益率は8.8%。


ガーラ(4777)

オンラインゲームが中核。監視業務は子会社を通じたもののみで、売上に占める割合は10%程度。同社も人件費を始めとする販管費が重石になり、営業利益以下赤字。ただし監視・データ収集業務を含むその他の事業の営業利益率は中間期で22.0%と高い。


デジタルアーツ(2326)

ネットのフィルタリングソフト大手。ソフトを使ってのフィルタリングのため、同社とは本筋で異なるので参考。営業利益率は29.8%と高い。


これらを勘案して考えると、同社の営業利益率は平均的な水準にあると思われ、逆にまだコスト削減余地があるとも捉えられる。

株式価値はガイアックスとの流動性の差なども勘案して考えると、大体時価総額ベースで22.5億円、株価的には1360円辺りが最終的な落ち着き処だと思われる。

ただしだからと言って必ずしも適正株価と市場株価がリンクするとは思えない。少なくともここ半年程度は過剰流動性を背景に、悪材料の表面化や急速に需給が緩まない限りは、3000円を割る事はなさそうだ。

逆にガイアックスはもう3割程度時価総額が上に評価されてもおかしくないのかも知れない。


【株価推移及びテクニカル】
公開価格1300円を大幅に上回り、初値3000円でのスタート。上場2日目の2601円を安値に、完全な需給相場に移行した。

目先2月頃までIPOが無いであろう事から、例年通り直近IPOで値動きの良いものが更に短期資金を集める動きが続くと思われる。その流れに合致するのは同社と先日上場の日本メディカルネットコミュニケーションズ(3645)辺りに絞られそうだ。

テクニカル的には先週木曜の大陰線に次ぐ金曜の大陽線が上部での大きな抱き線を形成した事により、典型的な天井形成パターンが出来上がってしまった。一旦は5000円を上限にして調整相場に入ると見るのが一般的。

もし上述のように年始にかけての新興株高、また直近IPO物色の流れに乗って5000円を超えるのであれば一段上のステージ入りと見るべきだろうが、一旦は月曜にどう寄りつくかが今後の趨勢を占う上でも重要。安寄りするようであれば、短期的な需給悪化は避けられそうにない。

12/6高値3500円辺りと、安値2601円及び13日安値2754円を結んだラインか下値抵抗線となりそうで、短期的には調整が入っても3000円前半で底を打つ可能性が高そう。

長期的には明らかに今の水準が高過ぎる事を考慮すると、上昇余地よりも下値余地の方が大きい。一方で、需給相場入りしている事を考えると、短期的にはこれらの理性的な判断よりも直情的な判断の方が有効なケースもあり判別が難しい。

需給相場により株価が上伸したとしても、1月末に予定されている四半期決算が転換点となる可能性も高い。多少決算の数字が良かったとしても材料出尽くしとなる可能性が強そうで、株価は期間限定のものになりそうだ。


【課題】
一つ一つのサイトが小口化・少人数化されていく傾向にあり、その分同社にとっては研修費用なども含めた急激な増員に対する人件費及びサーバー管理費を始めとするコスト負担が次第に大きくなってくる。売上の増加に合わせてコストの低下も同時進行しなければ、業界環境の変化に対する適応力が弱くなる。

また今後は伸長著しい海外のFacebookを始めとするSNSを相手に販路を広げていく必要がある。企業に対する噂や風評などのセンシティブな部分を取り扱うため、一旦獲得したクライアントは継続的に取引相手となり易い。一方でそれは他社の顧客を獲りにくい事も意味し、いかに新規で成長力のありそうな取引先を確保していくかが難しいところだろう。

今は需要がドンドン拡大する時期であるため、そういった問題が表面化しにくいが、次第に競合他社が増えてくると直面し易い。その前に調達した資金や知名度によって自社の規模を拡大し、ライバルの機先を制する施策が必要だ。同時にコンサルを強化して、取引先を育てていくという形も必要だろう。

監視事業の割合が売上の8割を占めており、業務の多角化も必要と思われる。足元は大株主で主要顧客でもあるグリーの成長によって同社も安泰であるが、リスクはなるべく分散しておく必要がある。新規上場によって大きな資金と注目を集める事ができたので、数年先を見据えたビジョン実現のためには今が最も重要な変革期とも言える。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。