KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

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12年2月12日現在
3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  3月中旬頃
3ヶ月以内株価予想 105円〜140円


要点
・業績は会社計画を上回る公算も、元々保守的な見積もりであるため市場コンセンサスに沿った進捗。
・他社比では財務体質や営業利益率、配当利回りの面で劣る。
・テクニカル、需給は良好な状態であるものの、130円〜140円での上値は重い。
・非繊維事業の拡大を一段と加速して、利益率を高めることが課題。


【企業概要】
関東発の繊維中心専門商社で業界3位。筆頭株主にグンゼ(3002)。足下では非繊維部門を育成中。プラモデル用塗料などが有名。


【業績】
前期は増収増益。アジア向けの販売が伸び、一方販管費も削減できて利益率も改善。最終利益もかろうじて増益を保つことができた。

今期は増収ながらも営業減益の計画。ただ先日発表した第三四半期決算では利益面で会社通期計画をほぼ達成している。会社計画は保守的との見方も。

主力の繊維事業は今冬の冷え込みにより、国内では機能性肌着が伸びたものの、パンストなどの取り扱いでは苦戦。ヨーロッパや韓国においては円高による逆風をはねのけて、特にアウター用生地の輸出が拡大した。

その他の事業においても半導体関連装置に対する環境の逆風の中、それぞれの売上を伸ばすことができて健闘している。

ただ世界的な景気回復期待から原材料価格は上昇傾向にあり、中国の生活水準向上により人件費も上昇傾向。コストの増加傾向が続けば反比例して取引量が減少する恐れがある。持続的な成長のためには新たな収益拡大策が必要である。


12年3月期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   120500
営業利益 2000
税前利益 1600
当期純益 1050

例年季節要因として最終四半期は売上が小さめである。今期はむしろ進捗率がやや低いが、今冬の冷え込みなども考慮すると、それでも会社計画を上回ると思われる。利益面でも四季報予想並の利益率は残せるものと見る。


有利子負債は212.8億円で前期から500万円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は183.5%
現預金は83.5億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は114.4%

有利子負債比率が同業他社と比べても高い。財務状況はあまり良いとは言えない印象。


フリーキャッシュフローは中間期時点で10.5億円の赤字。前期に比べて買掛の幅が減ったため営業キャッシュフローは赤字転落。また投資額も増加した。

ファイナンスに関しては過去30年以上行われていないことから、基本方針としては借入などで対応するものと思われる。ただグンゼとの資本関係強化という流れから、第三者割り当て増資があってもおかしくは無い。


【株価推移】
かつて日本の中心産業であった繊維業界も、産業構造の転換によって緩やかな下降を続けている。それに伴って株価も下落傾向が続き、リーマンショック後の08年には65円の上場来安値を付けた。

その後緩やかに回復を見せて一時150円に迫る場面があったものの、震災を受けて瞬間的に再度66円まで下落する場面も。以後は概ね100円を挟んだ値動きで推移している。


【テクニカル】
昨年11月の安値から地合の好転もあって株価は右肩上がりの上昇に。各移動平均線を上回ってきており、11月〜1月の安値を結んだ下値支持線と、12/5及び2/6の高値を結んだ上値抵抗線に挟まれたゾーンでパラレルな上昇波動を形作っている。

足下は決算を受けて直近高値を付けたものの、高値陰線を形作って下落局面。ただし高値で特に極端に出来高が膨らんだわけでもないため、あまり天井感は無い。来週はやや調整が続くものと思われるが、上述の下値支持線と25日線に支持される形で、110円辺りで下げ止まるのではないか。

一方MACDパラボリック共に暗転が近い水準であるため、地合にもよるが目先一ヶ月程度はもみ合う場面を想定。110円台での推移が続きそう。

一目均衡表で見ると、雲が下値に次第に広がってくるタイミングであるため、時間の経過と共に下値は固まってきて安心感が出るだろう。ボリンジャーバンドでは日足、週足共に+2σに達したところで、上値の重さを感じる流れになってきている。

長期的には揺るやかな上昇トレンドではあるものの、震災後の高値である130円辺りでは、強めの抵抗が生じるものと思われる。またそれを抜けたとしても08年以降の高値水準である140円が強力な抵抗帯になりそう。月足の雲の厚みなどが重さを物語る。


【需給】
直近では1/26に商いを伴って大きめの陰線が出来てしまったが、現段階でその水準は上回っていることから、短期的な需給は好転している格好。震災後に高値を付けた6/17には出来高を伴いその後の下落波動の入り口となったが、高値から半年後の信用期日通過を受けて、11/25以降需給が軽くなっている印象。

実際に6/17に260万株あった買い残は11/25には182万株にまで減少。以後信用買い残を少しずつ積み上げながら、株価も上昇してきている印象。日々の出来高が20万株程度であるため買い残は重くのしかかってくるが、現状のペースであれば5月頃までは積み上がりを容認できる。

従って、需給バランスは本決算発表の辺りまでは比較的良い状態を保つことができ、本決算を受けてその後の需給動向が再度決まってくるものと思われる。


【同業他社比較】
同社の予想PERは6.8倍。PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は1.5%、予想ROEは8.6%
配当利回りは1.7%。
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


蝶理(8014)
繊維商社の老舗で業界2位。足下では化学品事業や機械などの取り扱いも増やし、中国ビジネスを増強中。東レ(3402)傘下。

予想PERは6.7倍、PBRは0.9倍
今期予想営業利益率は2.6%、予想ROEは12.8%
有利子負債比率は2.6%
予想配当利回りは2.0%

各指標共に同社に比べて勝っており割安感。ただし有利子負債は極めて小さいものの、その分過去に発行した優先株の配当が負担になっている。また普通株転換も可能な状態になっているため、転換がなされると株価の重石要因に。


ヤギ(7460)
大阪地盤の老舗繊維商社で業界4位。繊維二次製品へ注力し、川下志向を強める。

予想PERは7.6倍、PBRは0.5倍
今期予想営業利益率は3.2%、予想ROEは7.7%
有利子負債比率は38.1%
予想配当利回りは3.5%

大証2部銘柄ということで流動性が低く、その分PBRなどでは割安に放置。営業利益率や配当利回りの高さを見ると妙味がある。


タキヒヨー(9982)
名古屋地盤の繊維商社で業界5位。中国依存度を減らすためにベトナムやミャンマーなど他のアジア地域に生産拠点を分散。

予想PERは33.7倍、PBRは0.8倍
今期予想営業利益率は2.9%、予想ROEは2.3%
有利子負債比率は39.1%
予想配当利回りは1.8%

株式価値的には割高感。有利子負債比率が同社に比べて良い程度で、その他の指標は概ね同程度。


三共生興(8018)
老舗繊維商社で業界7位。「DAKS」など欧米高級ブランドライセンスを保有。

予想PERは10.8倍、PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は6.8%、予想ROEは7.6%
有利子負債比率は60.8%
予想配当利回りは4.3%

株式価値的には同社と同程度。営業利益率や有利子負債比率では同社に勝っている。配当利回りが高く、期末一括配当のため、ここから狙われやすそう。


業界的に産業としての成長性が低く見られているためPERやPBRは割安で放置されている印象。ただ同業他社と比較してみると、営業利益率の低さや有利子負債比率の高さ、配当利回りの低さなどからやや割高感を感じる。


【課題】
まず繊維産業全体としては成熟産業の典型とも言える。またユニクロを筆頭にした大手小売りによる海外展開の拡大、それに伴う現地調達・生産の流れを見ると、繊維専門商社の役割は徐々に低下していく方向にある。国内消費も先細りが懸念されている。

従って各社共に危機感を抱き、収益拡大策としては各社共に非繊維事業である化学品などの強化、コストカット策としては中国シフトとほぼ右習えの施策をとっている。自前でSPAなどを立ち上げて、需要取り込みを図っている。

中国は人件費の上昇などにより、既に生産国としての魅力から消費国への魅力に移り変わっている。衣料製造各社共に消費国としての需要を取り込みつつ、生産に関してはインドを含む他のアジア地域へと拠点を移し替える流れであるが、同社は中国・タイ止まりで、その他の地域は手薄である。

同業他社は既に中国からのシフトを鮮明にしており、現地企業との取引も進めている。同社も出遅れを挽回し、他地域での現地法人設立などを急ぐべきである。

同社はカーボンナノチューブの開発に力を入れることで、燃料電池や炭素繊維分野への切り口を見つけ出している。ただし現在まで目立った収益をあげることができず、業績への貢献が薄い。それでも将来的な利益の源泉であり、引き続き傾注し早期収益化への道筋を作るべきである。

同社に関しては特に財務体質と利益率の改善が命題である。利益率の高い非繊維事業の割合を大きくすることで、繊維事業で培った強みを生かしつつ拡大していく方策を一層進めるべきであろう。

一方で繊維事業は利益率を高めるためにも、高付加価値品の独自開発が必要だろう。グンゼとの共同で高齢者向けや介護向けの肌着などを生み出せれば、ユニクロのヒートテックのようなヒット商品となり、世界的なスタンダードを作り上げることも期待できる。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。