KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

商船三井(9104)のアナリストレポート

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3ヶ月以内投資判断 「中立」
買いのタイミング  現在
3ヶ月以内株価予想 320円~400円

要点

・今期は構造改革費用などで大赤字を計上するものの、今期中に膿出しをすることで、来期以降の黒字転換に期待。足元の世界的な景況感改善傾向や円安から、業績は急回復の見込み。
・テクニカル的には下値が堅く、上値余地は大きいことから目先は上値追い継続の流れ。
・需給的にも売り圧力が乏しい中で、買い優勢の展開が見込まれる。ただし昨年10月安値からの絶対期日到来や、来期見通しの出る本決算があるため、4月から潮目が変化する恐れがある。足元の海運業急騰の反動にも注意。


【企業概要】
船隊規模世界一の海運会社。鉄鉱石船、タンカー等の不定期船に強み。


【業績】
前期は大幅な減収減益。欧州危機による世界的な景気減速懸念から荷動きが弱まり、赤字転落となった。


今期は増収ながらも、営業利益は赤字幅が縮まる程度の見込み。短期契約で運行する高コスト船を圧縮する構造改革費用約1010億円や繰延税金資産の取崩し300億円弱などを計上することで、最終利益は大幅な赤字に。無配転落となった。

足元では世界の景気回復期待から荷動きが戻ってきているものの、昨年までは引き続き世界的な景気先行き不安感が大勢を占めていたため、回復は来期以降発現の形。

不定期船、定期便共に赤字は続く見通し。鉄鉱石は引き続き中国での需給が緩いため、荷動きは弱そうだ。ただし足元で世界的な自動車販売が回復しており、また原発停止継続によるエネルギー確保の必要性継続から、資源運搬船がしっかり。構造改革により、来期の収益改善効果は400億円規模になると見られる。

一方で同社が得意とするドライバルク(固形原料・資源)船は世界的な供給過剰感が解消せず。運賃単価を示すバルチック海運指数は足元で回復途上にあるものの、昨年12月の急落分の半分程度を戻したに過ぎない。ケープ船の短期用賃料などは主要4航路平均で一年前の1/3以下に止まっている。

ただし海運指数は一方向に振れやすい性質があるため、今回の戻りがどこまで続くか見極める必要がある。株価はそれによって大きく左右される。


13年3月期予想(KA.Blog)単位:百万円

売上   1515000
営業利益 -16000
経常利益 -24000
当期純益 -170000

想定為替レート 1ドル=93円

例年会社計画は保守的であり、また足元の交易条件の改善から会社計画は十分達成可能の見込み。来期以降のV字回復に期待。

なお為替については1円のドル円円安で最終四半期2億円分経常利益を押し上げる効果があるとされる。間接的にも好影響を享受できるため、想定レート88円で見込む会社計画はやはり保守的であると見る。


有利子負債は9687億円で前期から1193億円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は163.1%
現預金は1299億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は128.6%で前期の119.8%から改善。

有利子負債は大幅に増加。ただその分現預金も前期比800億円増加しているため、実質的な有利子負債の増加額は400億円程度。


フリーキャッシュフローは464.9億円の赤字。

法人税の支払いが減ったことで営業キャッシュフローが黒字化。その分前期よりは赤字幅が縮小した。


粗利率は4.8%で、前期の4.7%との比較ではほぼ横ばい。
予想ROAは-1.4%で、前期末の-1.2%から悪化。

ROAに関しては会社計画が保守的であるため、実質的には前期と変わらない程度の水準で着地できるものと思われる。


ファイナンスに関しては一定量の発生リスクは考慮したい。ただしあったとしてもグループの三井住友銀行などに対する第三者割当方式になってくると見られるため、株価に与える影響を過度に心配する必要はなさそうだ。


【決算後の各アナリスト評価】
ゴールドマンサックス証券 投資判断「中立」 目標株価310円


バークレイズ証券 投資判断「Equalweight」 目標株価320円

構造改革による来期以降の損益改善効果は、ある程度株価に織り込まれた。


モルガンスタンレーMUFG証券 投資判断「Underweight」 目標株価 260円

合理化費用を計上することで1株利益が毀損することを考慮。


アナリストの評価は概ね現値水準を妥当と見ているが、最近の地合改善を受けて目標株価をそれぞれ引き上げている。


【株価推移】
リーマンショック後は世界的な景気減速を嫌気して下落が続き、昨年まで下落歩調が止まず174円まで下落した。世界的な株高や特に直近で海運業が盛り上がってきていることから株価は高値追いの姿勢を強めている。


【テクニカル】
移動平均線を上回り、2月の高値も上回ってきたことから、上値は軽くなっている状態。2月から上値の抵抗となっていた330円辺りが、今後一転下値支持として期待され、下値安心感に繋がる。一方上値は昨年3月戻り高値でかつ11年上半期の下値水準でもある400円辺りまでは節がなく、目先は買いが優勢な展開が続きそう。

日足ではMACDパラボリックが好転。一目均衡表も三役好転の形が続いており、上昇トレンドは継続の流れ。ストキャスも好転し、ボリンジャーバンドは出来高を伴って+2σを拡大して進んでいるため、上値追い継続が見込まれる。

週足では一目均衡表の遅行線が間もなく雲の薄い部分を上抜ける見込みであり、一段と上値追いに勢いが付きそう。中期的にも上昇余力の強さが見て取れる。


【需給】
直近で約1年ぶりの高値水準を付けていることから、上値のしこりは少ないところ。1月末に決算を受けて出来高が膨らんだ水準も上回っていることで、売り一巡感が出ている格好。

信用買い残は差し引き1300万株程度で、昨年4月以来の水準にまで改善。日々の出来高との比較でも十分こなせる程度のレベルであり、特に上値を抑える要因にはならない印象。

ただし約15年ぶりの安値を付けた昨年10月からの信用期日が4月上旬にも到来することから、需給の潮目の変化が近づいていることには留意しておきたい。


【同業他社比較】
同社は赤字見込みで、PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は-1.2%、予想ROEは-29.9%
配当は無配
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。


日本郵船(9101)
海運売上高では日本一。陸運・空運も含めて、総合的なロジスティックを提供。傘下に郵船ロジスティクス(9370)。

予想PERは75.7倍、PBRは0.8倍
今期予想営業利益率は1.0%、予想ROEは1.0%
有利子負債比率は206.9%
予想配当利回りは1.5%


利益率は低いが黒字は確保。有利子負債が大きいものの、背景には三菱グループがあるため安心感はある。


川崎汽船(9107)
海運大手3社の一つ。コンテナ船に強みを持つが、同社の得意とするバラ積み船や自動車船を強化中。

予想PERは21.1倍、PBRは0.8倍
今期予想営業利益率は1.0%、予想ROEは3.5%
有利子負債比率は193.5%
予想配当利回りは0.9%


大手3社の中では株式的な価値は割安で利益率もやや高め。定期コンテナ船が不況下でも稼働率を高め、コスト削減により黒字化できたことが大きい。ただ背景に財閥的なバックボーンが無いため有利子負債の大きさは増資に繋がるところは弱み。実際10年・12年と大規模な公募増資を行っている。


第一中央汽船(9132)
同社が筆頭株主の系列会社。鉄鋼関連に強みを持つ不定期外航船大手。赤字が続いて疑義注記があるが、今期は同社が優先株を引き受けたことで、債務超過回避。

今期は赤字見込みで、優先株が入ったことでPBR、ROE算出は無し。
今期予想営業利益率は-1.4%
有利子負債比率は391.7%
配当は無配

有利子負債が大きく、経営は非常に厳しいところ。足元で主要顧客の鉄鋼業界は回復が見出せず、来期の黒字化も現段階では不透明。株価はややマネーゲーム化している。


NSユナイテッド海運(9110)
日本郵船系でバラ積み船が主。新日鐵住金(5401)が筆頭株主で、やはり鉄鋼関連に強みを持つ。

今期は赤字見込みで、PBRは0.7倍
今期予想営業利益率は-0.3%、予想ROEは-6.1%
有利子負債比率は157.1%
配当は無配

中堅海運の中では経営は比較的安定しており、有利子負債も低め。


同業他社(特に大手)との比較では、同社は利益率は低めなものの財務的には安定的。株価評価も概ね妥当な水準と思われる。来期の黒字化で巻き返しを図りたい。


【課題】
海運業全体として利益率の低い業界になっており、不況期に対する耐性が弱い。本来は一層のボーダレス化により国内外の物流が益々活発化していくであろうことから、海運業の事業環境は悪くないはずであるが、海洋大国を目指す中国で新造船の供給が過剰となっており、国内の海運業も厳しい競争を強いられ再編必至の状況にある。

同社も早期黒字化・復配にメドを付けることは当然として、出資先の第一中央汽船の業績が悩みの種。第一中央汽船の赤字が小さいものであれば、普通に出資することで子会社化、再編などによるテコ入れも可能だった。

ところが取り込むことで目先同社の赤字も大きくなってしまうことを恐れて、今回優先株による出資という形での支援が行われたのであろうと推察される(将来的には黒字化したところで、普通株転換による子会社化が見込まれているものと見られる)。

あとはコストをいかに抑えられるか。海運業界はスピード減速や潮流を計算に入れる航路を採ることで低燃費走行の努力を続けるが、燃料コストの上昇がその努力を打ち消してしまう。

足元でシェールガス革命の影響もあって原油価格は比較的落ち着いているものの、これから先は世界的な景気回復期待、また緩和マネーの商品市場流入などから、いつ上放れの動きが出てもおかしくはない。同社は原油価格1ドルの上昇で3000万円の利益減要因になることから、先物予約などでヘッジを図りたい。


【総合評価】
目先は上昇継続と見るも4月頃からピークアウト感が出る可能性があり(地合の変化、絶対期日到来、本決算発表などを契機として)、この3ヶ月間の値動きは山型を想定。つまり4月中頃までは上昇基調が続くも、その後は下落していくものと見て、最終的には300円前半辺りに落ち着くであろうことから「中立」とした。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。