KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

一生の宝物

友達はたくさん居れば居るにこしたことはないですが、その分別れは辛いものです。死別は辛いですが、私はどちらかというと生きているのに全く連絡が取れなくなって、一生会う事ができないかも知れないという状況の方が余計に辛いような気がしますね。

子供の頃に「絶交だ」とか言って遊ばなくなった友人がいたりします。その時は些細な事で怒って「もう遊ばない」と思ったのですが、後になって考えてみると自分が意固地になっているだけだったり。そんな事を今思い返してみて「タイムマシーンがあったらなー」とか思ったりします。

一方、遠い国へ行ってしまって連絡が取れなくなってしまったケースもあります。今ならEmailがあるので外国であろうがどこであろうが端末さえあれば連絡は取れるわけですが、当時はそこまで使いこなしてなかったものですから、すっかりと不通になってしまいました。過去に何となく聞いたメールアドレスを元に送信してみましたが、やはり宛先人不明で戻ってきました。先日ここで書いたタイの友人然り、韓国の友人然り。恐らくは一生会う機会などやって来ないのではないでしょうね。

皆さんどうかわかりませんが、私の夢に出てくるのはほとんどが過去の小学生の頃や中学生の頃、大学時代の友人知人でごちゃ混ぜになって出てきます。今よく会う人は逆に夢にほとんど出てきません。意識下に占める会わなくなった友人のウェイトは大きいのでしょうね。

さて、今日は日曜なので小説の日です。前回までの分は毎週日曜のブログを参照してください。そして予めお断りしておきますが、来週は実家に帰るためお休みさせていただきます。


                          正義のみかた

※この作品はフィクションであり、実在する、人物・施設・団体とは一切関係ありません。

第十二章 白熱する大捜査線

「昨夜午後8時頃、福岡少年鑑別所から少年3人が逃走したと福岡北警察署に通報がありました。少年らは集団で浴場に向かう際、監視の目が甘くなったところを狙い・・・」
ニュースでも敦君達の逃走を報じていた。
「近隣の小中学校は緊急に集団登下校を決定し、警察は逃げた少年達の行方を追っています」

バカな真似を!私は思わず右手にコーヒーカップを持っているのも忘れ、興奮のあまり大切な書類の上に思い切りぶちまけてしまった。所内の視線が一斉に私に集まる。台拭きを持った秋月君が慌てて駆け寄ってくる。

一体彼に何があったと言うのか?来る裁判に備えて大人しく、品行方正としている事が大事だとあれ程言ったのに!よもやこの狭い日本の中を逃げ切れると思ったら大間違いだ。早まった真似を・・・

他の一緒に逃げた少年達にたぶらかされたのであろうか?それが主犯であれ共犯であれ、私の計画は多いに狂う事となった。今まで立てた戦略、今まで書いた書類が全て水の泡だ。現実的にも書類はクリームの泡だらけ。わたしはしばし茫然自失となった。

「あーあ、火傷しませんでしたか?」
秋月君がまるでいたずらして花瓶を倒した子供の後始末をするようにデスクの上をきちんと回復してくれた。
「あぁ、ありがとう」
言葉に出したのはそれだけ。正直なところそれ以上言葉を繋げる余裕がない程、私の気は動転していた。

彼の父親である雄三氏に電話をかけてみようとして思い止まった。警察も当然彼のところに行っているだろうし、そもそもかけたところで無駄であろう。そうなると逆探知の手配はとっくに済んでおり、話がややこしくなるだけだ。ちなみに逆探知はドラマのように時間がかかるのは一昔前のお話で、今では電話に出る前に既にどこから発信されたかわかるらしい。

「仕方ない。行動あるのみか」
私はアリトのキーを握りしめるとそのまま事務所を飛び出した。書類の裁可を待っていた連中の呼び止める声を背中に受けながら。

行動すると決めたものの、まずは何をしたら良いのか?ひとまず敦君の交友関係から洗ってみることにした。できれば警察に厄介になる前に私の手で何とかしたい。私が警察よりも先に見つけて「説得に応じて自分から鑑別所に戻ってくれた」という筋書きが事ここに至っては一番マシな解決方法だ。しかしどうすれば警察を出し抜く事ができるだろう?向こうはその道のプロなのに。組織力や機動力が違い過ぎる。が、今の私に思いつく事はせいぜいこの程度だった。

福岡市内の中心地にある繁華街に到着した。辺りにはライブハウス、クラブハウスと軒並み揃っている。高校生は立ち入りは元より深夜に出歩く事さえ禁止のはずだが、そう言われれば余計に破りたくなるものだ。私はよく敦君達が行っていたというクラブハウスに目星をつけ、潜入捜査とたれこんだ。

敦君の遊び仲間もやはりこういう店に出入りしているわけだが、さすがに制服で入るわけにはいかないから私服に着替えて入店しているようだ。今時の高校生は顔も老け顔。それなりの格好をすれば店側に呼び止められる事もない。

ただそのお陰で今回は余計な手間をかけさせてくれる。制服を着ていれば誰が敦君と同じ学校の生徒かは一目瞭然なのだが、この真っ暗な室内と大音量の音楽に捜査は難航した。しかたなく店員に頼る事にした。敦君の写真を見せる。

「あんた何?警察?」
いぶかしげな顔つきをする店員。20代前半のホストっぽい容姿だ。最近はどいつもこいつもチャラチャラしやがって・・・。店員に対する偏見をよそに、名刺を見せて一通り説明する。
「あぁ、こいつとよくつるんでる奴らなら今日も来てるよ。変な騒ぎは起こさないでよ」
一通り礼を述べた後、指し示された方向に向かう。この特殊な空間にスーツ姿の中年オヤジはいささか浮いた存在として目立っていた。

「あんた誰?弁護士?知らねーよ。邪魔だよ、邪魔!」
「あいつ逃げたんだって?俺も警察に色々聞かれたよ。でも知らないものは知らないね」
「敦?知らない。俺たちそんなにつるんでたわけじゃないし。純也なら知ってるかな?あいつら割と仲良かったから」
その純也という少年の居場所を尋ね、よくたまっているというライブハウスへと向かった。ライブハウスもクラブハウスと大差ない。よりハードな曲が大音量で耳をつんざく。スタッフらしき女性に声をかけて純也という少年がいないか聞いてみた。どうやら彼は出演者の側であったらしい。今演奏中の「Noisy」というバンドでベースを弾いているのが彼とのこと。名前の通り耳障りなだけの音楽だが、客はそれなりに盛り上がっている。仕方なく彼らの出番が終わるのを控え室の前で待つ事にした。

ライブが終わって汗だくの彼らが戻ってきたところに名刺を差し出し話しかけた。髪を金髪に立てたバンドネーム「Jun-Ya」という少年はスポーツタオルで汗を拭きながらベースをイスの上に置き、面倒臭そうに名刺を受け取った。
「こっちには来てないよ。ステージ前に警察にも聞かれた。あいつも無茶苦茶するなぁ」
表情にライブ終わりの疲れをにじませながらそう応えた。純也君はミネラルウォーターを飲んで一息ついてタバコに火を付けた。高校生の喫煙に関して今とやかく言うつもりはなかった。暗めの照明の控え室にタバコの煙が曇る。

「あー、そういえば丁度今くらいの時期かも」
「時期?」
突然何かを思い出したように話始めた。
「敦の親父さんがさー、年に一度だけ別れた奥さんと会うんだって。会ってその年の慰謝料の支払いとかの話をしてるんだってさ。」
年に一度の出会い。だが現代版織り姫彦星というのも世知辛い。妻の方が蒸発しておきながら慰謝料まで請求しているとは。人様の家庭に過剰に首を突っ込むつもりはないが、雄三氏もなんて気弱な事か。

「別れたのは5年程前って聞いたけどまだ慰謝料を払ってるってことかい?」
「そこまでは知らない。ただ一度に払いきれないから毎年少しずつ払ってるってーのは聞いた事があるけど。」
「それってどこの場所で会うとか聞いた事ない?」
「そこまではわかんないよ」

礼を言って今日のところは一先ず調査を終える事にした。手掛かりは掴んだ気がする。雄三氏と静香さんが出会うその現場に敦君は向かうつもりだ。逃走の時期とタイミングを考えると整合性がある。落ち合う場所を雄三氏から聞き出したいところではあるが、既に午前0時を回っている。一晩ちゃんと寝る位の余裕はあるだろう。とりあえず明日の目的が決まった私は深夜のネオン街を通り抜け家路を急いだ。