KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

ソフトクリエイト(3371)のフォロー

最近忙しさにかまけて全然銘柄のフォローをしていませんでしたので、暇を見つけて一つずつポートフォリオのフォローをしていきたいと思います。今回はポートフォリオで最も歴史の古いソフトクリエイト(3371)のフォローからいきたいと思います。

【概要】
同社は元々首都圏の小さなパソコンショップでしたが、昨今のビックカメラヨドバシカメラといった巨艦家電量販店の攻勢にさっさと業態の変化を決定し生き残りを図りました。

現在ではITのシステム開発を手がけるSI(システムインテグレーション)事業が営業利益の95%を占め、主力の業態となっています。それ以外のITインフラ提供事業、当初のパソコンショップ事業(ネット通販の「特価.com」)は利益率ベースでは微々たるものですが、これら3つのセグメントはそれぞれ互いにリンクしあい、シナジー効果を生み出して効率の良い事業モデルとして成立していました。ただ先日特価.com事業をストリーム(3071)との合弁会社に譲渡する事を発表しています。これによって本業であるSI事業に特化する事となりました。

主力商品は「ecbeing」というソフトで、これは各企業がネット上で店舗を出店する際のコストを従来の1/10とできる強力な商品です。ネットを使った物販はECと呼ばれて久しいですが、未だネット上に店舗を出店せず、リアルな店舗で商売をされている企業も多く存在します。そういった手前でネットショップを構築できない企業をターゲットに売り込みをかけています。

他にも日本版SOX法に対応した書類作成ソフト「X-Point」やPCの不正検知ソフト「L2Blocker」など、ソフトの品揃えも次々充実させ、開発力の高さを伺わせます。そしてそれらをバックアップするのが営業の人材力。「良いソフトを作っても売れなければ意味がない」というスタンスから、こういうSI主力の企業にしては珍しく、営業に多くの人員を割いてその普及に努めています。

【業績】
2005年に上場してから業績はほぼ右肩上がり。8年3月期に売上高100億円、営業・経常利益は10億円をそれぞれ突破。今期は投資有価証券の評価減により、最終益が初の減益見通しとなるものの、これで評価替えが必要な有価証券はほぼ0となったため、今後の減益要因は無くなりました。来期は特価.com事業が無くなるため減収減益は避けられそうにありませんが、同事業の最終利益は元々1000万円しかありませんでしたから影響は軽微。最終利益は過去最高益更新が見込まれています。

配当性向20%を目標に経営されており、上場来減配無し。利回りは現在で4%越え、株主優待も設置し、過去には相次ぐ自社株買いを行って株主重視の姿勢を鮮明に打ち出しています。

来期(10.3)予想(KA.Blog)
売上90億円 営業利益10億円 経常利益10億円 最終利益 8億円 配当年40円

同社には季節的要因があり、第1四半期が最も売上から最終利益までの数字が小さく、第4四半期の数字が最も大きいという特性があります。

【直近の動き】
順調な業績拡大によって昨年末に東証2部上場が承認。ブランド力の強化が図られました。また昨年は関西支社を設立する事によって西日本の拠点を確立。来期から本格的に業績に寄与してくる予定です。

同社の経営スタンスとしては業務提携によってビジネスパートナーを増やし、販路を拡大するというのが根っこにあり、手を携えている企業は上場企業だけでもオービックビジネスコンサルタント(4733)、サイボウズ(4776)、セプテーニ(4293)、住商情報(9719)といったところが名を連ねています。最近ではエイジア(2352)との資本・業務提携を発表しましたが、資本提携はエイジア株の値動きの激しさから中止。業務提携のみとなりました。

いずれにしても引き続きビジネスパートナーを増やす事で販路を拡大し、規模の経済力を生かしながら商圏を拡大していくというスタンスです。

【今後の見通し】
主力のECサイト構築は一度受注したらコンサル・保守契約で引き続き手数料収入が見込めるタイプですから、不況による企業のIT設備投資減速の影響は受け辛く、積み上げタイプで業績は底堅く推移できるものと思われます。

2008年末頃野村総研が出したレポートによると、EC市場はモバイルの拡大により2013年には現在のほぼ倍にあたる12兆円市場に達するとの試算もあります。それでも日本全体の消費が約180兆円とされる中、ECサイトの比率はせいぜい6%ですから、まだまだ拡大余地があるといえそうです。

また昨今の不況で「巣ごもり消費」がキーワードとなる中で、家に居ながら安価な商品を比較して購入できるネットは強力なツールと言え、企業のECに対する指向も強いでしょう。ですからECサイト構築No.1企業としてのノウハウを必要としている企業はまだまだあると思われます。

↓(参考)野村総研HPより
http://www.nri.co.jp/news/2008/081217.html

【株価推移】
好業績が続いているにも関わらず残念ながら株価は上場時をピークに下落の一途を辿っています。最高値から一時1/13程度にまで下落した場面も。それは当初上場していたヘラクレス市場の新興銘柄らしさを象徴しており、上場時に過剰な期待を背負ってしまったがため。一般的に表示されるチャートは東証2部からのものとなっており心機一転しておりますが、基本ホルダーのほとんどは含み損を抱えており、現在の水準でできるだけ株主が入れ替わらないと上値は重いままでしょう。

また小型株に特有の「流動性の無さ」が嫌気される面もありました。ヘラクレス時代には一日数単位の売買しか出来ない日が続き、出来高0の日もありました。一方で信用買い残が常時2万株弱存在し、上値の重石要因となってきました。

このあたり東証2部上場時に貸借銘柄に選定され空売りも可能となった事から、少しは改善されてきています。その証拠に直近1週間の売買高は連日1万株を越えてきています(一方で優待タダ獲りの動きがあっただけという面も否定できませんが)。

銘柄としての知名度の低さがこの辺り問題ですが、最近は2部上場や提携の話などからも露出が増えてきています。IRも比較的積極的で、この辺りが結実すれば一気に株価は見直されるでしょう。

【指標分析】
前述したように、右肩下がりの株価は下値での大幅な株主入れ替えによってトレンド転換がなされると思われます。その条件は最低でも目下信用買い残高である2万株の出来高が現在の権利落ち後の平常運転期に一週間程度連続して出来る事でしょう。売買代金にして1日1500万円程度のレベルの話ですから、それ程高いハードルでもありません。

上値はヘラクレス時代の株価を加えて換算してみると、実は現在も26週線に抑えられているような格好になっています(丁度670円辺り)。そろそろ越えてくるのも時間の問題だと思いますが、それは大型株市場がある程度の落ち着きを取り戻し、小型株市場にも資金が流れてくるようになれば容易い話のはずです。

同社の属する東証2部指数は最近こそ堅調になってきましたが、未だ下げトレンドから脱却できておらず、まだ昨年10月の大暴落時の水準すら回復していません。まずは1950ポイントまで回復する程度まで戻す事が目標です。

最近ではあまり重視されなくなったPERは7倍、PBRは0.82倍という水準です。この辺り同業他社と比べると少し割安という程度でしかありませんが、少なくとも買われ過ぎという状況でないことも確かです。

【問題点】
株価的にはこれ以上下値余地がないと思われますが、それでも同社にもいくつか問題点や課題が残ります。その辺りをいかにこなしていくかに同社の今後がかかってきます。

まずはプロダクト系の事業において「ecbeing」「X-Point」に続く有力なソフトがなかなか出てこない事。特に「X-Point」は日本版SOX法対応の一巡により、売上の鈍化が懸念されます。今後のソフト開発をどのように進めていくかが経営上の一番の課題と言えるでしょう。方向性としては成長著しいモバイル分野に軸を置く事になると思いますが。

また主力であるEC向けの事業における最大のライバルはヤフー(4689)であり楽天(4755)であると思われます。両社ともECのフィールドを提供する巨大マーケットの管理者ですが、この辺りが購入者に対するポイント制度を軸に顧客の囲い込みを行って来ていますから、中小のECサイトはなかなか太刀打ちできないでしょう。そういったところとの比較を考えている中小のECサイト開設希望会社を上手く取り込んでいかないと、持続的な成長もやがて限界が訪れます。

そして中国向けの消費者に対するECサイト運営企業の関心も高いものと思われますが、その辺りの需要をどのようにこなしていくかも課題となってくるでしょう。国内で培ったノウハウがそのまま海外向けに通用するのかどうかも同社にとって重要な課題です。

最後には人材的・構造的な問題。同社の経営陣は基本林一族によって牛耳られています。それ自体は経営の決断・執行スピードが迅速化するというメリットもありますが、柔軟性がなくなる、コンプライアンス上で問題が出てくる可能性があるというデメリットもあります。経営陣がいくら「そんなことはない」と考えても第三者がそのように見なければ意味がありません。株式もほとんど保有しており「買収される」というような期待が望めないのも一般投資家としては面白味のないところです。

またIT企業としては社長・専務以外の年齢が比較的高いところもバランスの悪さを感じます。大手企業のOB等を外部から招いて、取引上のコネクションを維持している事自体は悪くないと思うのですが、同社からの生え抜きの若い幹部がいないとこの手の企業の従業員のモチベーションも高まらないのではないかと思います。

この辺りは上手く機能している段階では問題ありませんが、歯車が狂った時にイメージの悪化は避けられず、リスクの一つとして認識されるでしょう。上場企業として規模を拡大していく上では、経営陣の透明性が確保される必要があるでしょう。

※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。