KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

ドワンゴ(3715)のアナリストレポート

今週のお題これが私の至福の時
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3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング  3月までに底打ちを確認してから
3ヶ月以内株価予想 30万円

要点
・第一四半期は好スタート。ニコニコ動画好調持続。ただし主力の着うたは伸び悩み。外注費嵩んで営業減益。
・財務状況は良好だが、投資に重点を置いているため手元流動性にあまり余裕は無い。
・株価は上放れ局面。歴史的な上昇相場の入り口とも。需給は軽い。
・各事業毎の連携が不十分に映る。特にゲーム事業の収益改善が急務。
ニコニコ動画は高年齢者層の獲得に重点を置いていくべき。


【企業概要】
携帯向け音楽配信が主体。筆頭株主にエイベックスGHD(7860)。ニコニコ動画運営母体の二ワンゴ(取締役に2ちゃんねる創始者ひろゆき氏も)を傘下に置く。また先日コンテンツ製作のCELL社買収も発表。同分野の強化を狙う。ゲーム会社ではチュンソフトティーアンドイーソフトなど、コアなゲームファンに支持の厚い会社を傘下に収める。


【業績】
前期実績は大幅な増収増益を達成。なかなか赤字から抜け出せなかったニコニコ動画の収益がようやく黒字定着。同社の柱に成長しつつある。一方で音楽配信に関しては着うたが低下傾向。そもそも音楽業界にヒット作が出辛くなり、コンテンツそのものに陰りが出てきているのが原因。

今期は増収減益の見通し。3日に出した第一四半期決算は好スタート。ただし他の原価率は低減に成功しているものの、ゲームなどの外注が増える事によって粗利益率が低下。加えてニコニコ動画収益拡大策のために費用を積み増している事も背景。販管費率なども低下したが結果営業減益となった。

最近ではニコニコ動画の存在感に強まりが感じられ、民主党の小沢元代表が既存のマスコミを忌避してニコニコ生放送を利用した事で話題に。有料会員数も100万人を突破。加えて足元ではスマートフォンの普及により、モバイルでの視聴者も取り込み易くなり、更に存在感が増す事が予想される。テレビ局に対抗する新しいメディアを誕生させ、大きな勢力に育ちつつある。


11年3月中間期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上   18200
営業利益 650
経常利益 570
当期純益 530

第二四半期も引き続き好調な業績推移となると見られるも、着うた事業に関して大きな回復は見込み辛い。ニコニコ動画は順調に有料会員数を伸ばしているため収益寄与は大きくなると見られるものの、それ以外のゲーム事業などは伸び悩みの印象が否めない。なお買収したCELL社は2月下旬から連結予定。今回の中間期に与える影響はまだ小さめであると思われる(売上への影響3億円程度)。

有利子負債は12億円。有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は7.8%。ネットが主力の企業らしく有利子負債は小さめ。流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は 276%と前期とほぼ変化無く安全圏内。

フリーキャッシュフローは5.6億円の赤字。前年同期は1.7億円の赤字であり、幅は拡大している。未払い金の支払いで2.7億、売掛金の増加で2億の減少要因があり、実質的には前期と大きな流れに変化はないものの、投資費用が先行する状況が続いており、手元資金はカツカツな印象。これに今期CELL社買収の費用負担も加わるため、更に資金需要は増してくるが、まだ借入などで対応できる範囲と見られるため、ファイナンスリスクは小さいと見られる。


【第一四半期決算を受けたアナリストの評価】
コスモ証券:「B+」やや強気 半年以内目標株価25万円
ニコニコ動画事業における広告収入の増加を見込んで、計画の上ブレを期待。


【株価推移】
03年上場後、株価は一時4倍化。しかしその後なかなか黒字化しない業績を嫌気され下落に転じ、一時高値の1/8まで低下。ただ07年には業績上方修正による営業利益黒字化見通しが出ると大幅高、3ヶ月で5倍化となった。その後またリーマンショックの影響で10万円を割るなど、乱高下を見せる。株価は一方向に偏り易い性質を持っている。

昨年11/11に発表した決算を受けて株価は急落。しかしそこから切り返しを見せて、足元は上昇基調にある。その上昇は今年に入ってから特に顕著で、ニコニコ動画事業を牽引役とした業績拡大期待の高まりからのアナリストの好評価が背景にある。2年強続いたボックス相場上放れ、歴史的な3度目の上昇局面入りした可能性が高い。


【テクニカル】
足元では1/13・26の安値を結んだ下値支持線が位置する218000円辺りでまず下げ止まれるかどうかを確認したい。ただしそこで下げ止まる可能性はそれ程高くなく、1月下旬のもみ合い水準・25日線・11月安値から2月高値までの1/3押し水準などが位置する210000円辺りまでの下落は見ておきたい。

そこまで下落すると今度はMACDが暗転してくることから、目先は上値の重い展開が続きそう。好決算通過後の出尽くし感も感じられる。ただし上昇トレンドは継続中で、上記のように21万円で強い抵抗帯が存在するため、その前後で日柄調整をこなしてからは、再度上値を追う展開に移行すると見る。

短期的には買いのタイミングを推し量る必要があるが、長期的には上記のように歴史的な上昇局面のタイミングにある。売り一巡を確認した後は1月のようなもう一段の大幅高を期待できそうだ。


【需給】
信用倍率は時系列的にそれ程大きく変化せず、極端に取り組みが悪化するような形にはなっていない。信用買残も日々の出来高に比して、重石にならない程度。また足元の株価水準は2年半ぶりの高値であり、上値にしこりはない。需給は総合的に見て軽く、値動きの良さが一層回転を良くする可能性がある。


【同業他社比較】
同社の予想PERは32.9倍。また営業利益率は4.6%となっている。同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。

フェイス(4295)
着メロなどの携帯コンテンツ配信。傘下にウェブマネー(2167)やオンラインゲーム会社も。売上規模は同社の1/10程度。予想PERは19.7倍、営業利益率は2.7%。利益率などを考慮すると、同社と同水準レベルの評価に。

日本エンタープライズ(4829)
着うた配信。売上規模は同社の1/10程度。予想PERは17.7倍、営業利益率は9.0%。今年初めに業績予想を上方修正した事もあって、PERは割安になっている。利益率も販管費の削減により高くなった。


これらを勘案すると、今年に入ってからの大幅高の一方で通期見通しを変更しておらず、結果他社比やや割高に映る印象に。


【課題】
傘下に様々な子会社を持ち合わせるも、各々が有機的に結びついている印象は受けない。それぞれIT分野において存在感を持ち合わせている有力企業群であるが、携帯コンテンツ・ポータル・ゲーム各事業同士の連携が薄く感じられる。これらがもっと有用に繋がれば、更なる収益構造の強化が図られるものと思われる。

その中でも特にゲーム事業の存在が浮いている印象。ゲーム事業は既存のゲーム端末向けが主力であり、これからの趨勢を考えると一層ソーシャルアプリなどに注力していく必要がありそう。今回の決算期におけるゲーム会社の業績と、ソーシャルアプリ提供会社の業績を比べても勢いの差は歴然としている。そもそも同社は携帯やネットに強みのある母体なだけに、この辺りの扱いに少し違和感を感じる。

また主力である着うた配信に関しては、音楽コンテンツそのものの衰退が取り沙汰される中で、コンテンツを自社で育てるといった事業にも取り組む必要がありそうだ。筆頭株主であるエイベックスとの兼ね合いもあるだろうが、有望なアーティストを抱える音楽会社などの買収なども検討し、積極的に取り組むべき課題だと思われる。特に音楽コンテンツは他の事業とも横断的に結び付け易いものであるから、他社に比べて相乗効果が高い事業効率を得る事ができそうだ。

ニコニコ動画事業に関しては十分軌道に乗ってきていると言える。一方ネット動画の特性とも言えるが、視聴者の構成が30代までで85%となっており、それ以上の年齢層の獲得が今後の成長のカギを握る。小沢元代表の生放送を実施するなど高年齢層向けの話題性も提供するが、更にこの辺りに力点を置いて、一層の成長を図りたい。

また前回ブロードメディア(4347)のレポートの際にも取り上げたが、他社の動画配信ビジネスも含めて同ジャンルは常に違法サイトや「ネットデフレ」との戦いであり、 魅力的なコンテンツを擁しないと成功は難しい。

ただしニコニコ動画に関しては字幕を取り入れる形でユーザー参加型の、本当の意味での双方向性をもった配信形態と言え、今のところほぼオンリーワンである優位性があり、この先も更に拡大していく期待感は持てる。生放送も着実に浸透してきており、Ustreamと並んで新しい放送形態としてようやく市民権を得つつある印象。

同分野に関してはやはりmixiFacebookといったSNSとの連携が不可欠だと思われる。友人同士で映像を共有する・感想を言い合うといった、独自色のあるプラットホーム作りが必要だろう。また今後ネットテレビが普及すれば、それに対応させていく事でより一層ニコニコ動画の地位向上が期待できそうだ。


※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。