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2012年1月8日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや買い」
買いのタイミング 4000円〜4100円
3ヶ月以内株価予想 3900円〜5000円(材料の出方次第で最大7500円まで)
要点
・今期の黒字転換が視野に。業績は低位ながらもキャッシュフロー共々安定化へ。
・テクニカル的には短期ボトム圏に到達してきたが、もう少し下落歩調が続く流れ。ただし小さな材料に反応しやすい銘柄特性があり、また値動きも偏りやすいため、突然動意付く可能性にも留意。
・同業他社比では成長力の面で見劣り、やや割高な印象。
・地元産業や大学との協業を強めることで、開発力や経営基盤をより強固なものにできそう。
【企業概要】
群馬に拠点を置くバイオベンチャー。バイオ医薬品開発の研究試薬・抗体の製造販売を行う。トランスジェニック(2342)と業務提携を発表し、更に引き続き他社との連携強化を模索。上場来赤字が続き疑義注記あり。
【研究領域】
アルツハイマー病、がん、炎症、糖尿病、メタボリック、遺伝子組換えカイコ(GMカイコ)による抗体生産
【業績】
前期は赤字幅を縮小ながらも4期連続の赤字に。従前は実験動物の販売などで売上を立てていたが中間期で終了し、その剥落分を抗体、測定キットで補った。
今期は減収ながらも黒字転換を見込む。中間期時点で売上は数字上2割近い減収ではあるが、上述の実験動物販売終了に伴う影響が大きいため。それ以外の継続事業では増収を達成。人員整理や自社製品率のアップによって赤字幅も縮小している。
下期は主力の研究用関連事業においてキット、抗体の新製品を多数予定していることで売上の増加を狙う。実際5日に世界初の糖尿病に関するホルモンを測定する「活性型GIP測定キット」の発売を発表。業績に与える影響は現段階では軽微であるものの、ラインナップを拡充することで商品提供力を高める。
12年3月期第三四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上 750
営業利益 20
経常利益 20
当期純益 10
今期は概ね会社計画を全うできそう。上手くいけば第三四半期時点で黒字転換を果たすことも可能で、最終四半期は新発売のキットなどから若干ではあるが上積みも期待できる。バイオベンチャーと言えども、現在の売上のほとんどは試薬製販のためリスクは小さく安定的。売上の見込みも立てやすい。
事業成長の柱として注力する医薬シーズライセンスに関しては現段階の供与0。かつては同社の売上の1/5を占めていたこともあるため、供与が決まれば大きな業績の押し上げ要因として期待できる。ただし足下では具体的な話が無いため、業績予想には織り込まれていない。
最近のニュースではメタボリック関連で「女性は腹囲80センチ以上も肥満症に(現行90センチ以上)」と学会が検討に入ったという話も。特定健診の腹囲基準が具体的に厳しく設定されれば、同社の関連商品の売れ行き増も見込まれ、関連銘柄として注目される期待もある。
有利子負債は1.0億円で前期から1500万円減少
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)も5.1%
現預金は3.8億円で実質的な無借金
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は609.7%
バイオベンチャーは体質上金融機関からの借入が難しく、私募ファンドやVCによる出資、同社のように上場による資金調達が主軸であるから、ほとんど借入の無い業界。財務状態は良好。
フリーキャッシュフローは4100万円の黒字。売上債権の回収や投資有価証券の償還などにより黒字は確保。
一方でファイナンスの可能性はそこそこある。成長に向けた新たな研究や生産設備拡充のため、資金需要はいくらでもある業界であり、市場環境が整えば資金調達の手段として検討される場合もある。
ただ主要株主に名前を連ねるような化学品関連会社やM&Aに注力する大手製薬会社に対する第三者割り当て増資ならば、今後の取引先の安定確保や財務安定に寄与することで、逆に株価上昇のカタリストになる可能性もあるだろう。
【株価推移】
公開価格割れでスタートした同社は、バイオベンチャーの宿命とも言える右肩下がりの株価推移が続き大きく下落した。
しかし新型インフルエンザが猛威をふるうと、実際は研究分野とほとんど関連性が無いのに「免疫」という名前から買われるという株式市場の特異性もあって急反発。世間に「インフル」という言葉が踊る度にマスク関連銘柄と歩調を合わせて上昇することが未だにしばしば。
震災後に750円の上場来安値をつけたが「新規中期経営計画の一年前倒し達成」「トランスジェックやBGM社との提携」など好材料を連発し、ストップ高連発の確変に移行。一時上場以来の一万円に急接近する場面もあった。
その後約半年かけて1/3程度の水準にまで調整すると、テレビ番組で取り上げられたことや上述の新商品発売などちょっとした材料に敏感に反応し上昇。年末のバイオ株相場にも乗った格好で反発の兆しを見せる。
【テクニカル】
直近安値3040円から12/16の高値5400円までの幅2360円の半値戻しに当たる4220円に大納会で接近すると、今年に入ってからは上述の新商品発売や25日線の接近もあって反発の動きが出始めている。
ただMACDやパラボリックなどのトレンド系シグナルは暗転しているため、もう少し下落トレンドは継続しそう。一目均衡表では雲の上限が切り下がる場面であり、75日線もまだ下降トレンドのため25日線を割り込んでしまうとやや下値が心許ない印象。ストキャスも暗転目前。
従ってまずは25日線や上述の4220円で反発するかどうかを見極めてから買いを検討するというスタンスがよさそうだ。そこで反発しなければ最大75日線の辺りまでの下落を見込む必要がある。
週足などで長期的に見ると、750円の上場来安値から昨年6月の年初来高値9750円までの幅9000円の3/4押し水準にあたる3000円で下げ止まりを見せたことから、株価のリズムとしては半値の4500円分戻す7500円を目標としたリバウンドの途中にあると見られる。
ただし現実的には後述する需給や業績の裏付けに乏しいため、その辺りまでのリバウンドには別途何らかの材料が必要と思われる。逆に「材料があった場合に」7500円を目標株価とする、と考えるのが妥当である。
【需給】
震災後にストップ高を連発したところで、上場来最大の出来高を記録している。そのため最大のしこりを6000円以上の価格帯で残しているため、そこからの上値は重いと思われる。
ただ昨年年初来高値を付けた6/7から半年の信用期日通過にあたる11/22に安値を付け反発してきていることから、一定の売りは一巡したものと見られそう。信用買い残も9月にピークを付けてから減少傾向にある。足下では4万株にまで減少し、昨年5月の急騰前の水準にまで改善。
一方短期的には直近12/14にWBSで取り上げられる期待から急騰した場面で出来高を膨らませた。足下はそこからの調整局面にあるが、5日にまた長い上ヒゲを形成してしまったため、もう少し調整の場面が続きそうな印象である。
外国人持ち株比率はほとんど無いため、足下の市場環境での売りは限定的。また空売りの入らない銘柄であるため、株価は一方向に偏りやすい性質がある。
【同業他社比較】
同社の予想PERは138倍。PBRは1.4倍
今期予想営業利益率は1.1%、予想ROEは1.0%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。
トランスジェック(2342)
創薬のための遺伝子破壊マウスの作製、抗体の開発など。同社と業務提携し、相互補完を計る。
今期は赤字見通しでPBRは2.5倍
有利子負債は0
同社との株価比較はPBRくらいしかできないが、やや強引に比較してみると同社の方が割安な印象。
カイノス(4556)
臨床検査薬で中堅。検査用試薬に重点。糖尿病検査試薬など、同社と競合する部分も大きい。検査装置の販売も。
予想PERは9.5倍、PBRは0.4倍
予想営業利益率は4.6%、予想ROEは4.6%
有利子負債比率は57.4%
配当も実施しており、成長力も高い。同社に比べて株価は割安な印象。ただ市場の流動性が薄いため、割安に放置されている印象もある。
タカラバイオ(4974)
遺伝子研究用試薬では中国でトップシェア。安定した利益をあげて、バイオベンチャーでは優等生。海外展開にも積極的。
予想PERは58.6倍、PBRは1.2倍
予想営業利益率は6.6%、予想ROEは2.1%
有利子負債比率は1.0%
経常的な黒字体質、株式価値、成長性などを総合的に評価すると同社に比べて割安な印象。
カイオムバイオサイエンス(4583)
理化学研究所発のバイオベンチャー。抗体の開発、支援事業を行う。主な販売先は中外製薬(4519)。
予想PERは139倍、PBRは9.2倍
予想営業利益率は8.3%、予想ROEは6.7%
有利子負債比率は19.0%
昨年末に上場したばかりであり、まだIPOプレミアムが大きくて割高な印象。ただ来期への期待も高く、株価は公開価格を上回って高値水準を維持している。
同業他社に比べて極端に割高でも無いが、まだ利益率や成長力に関しては見劣りする印象。安定的な業績の積み上げでは株価的にはボラティリティが小さくなるので、株主としてはリスクが大きくても決まれば業績インパクトの大きい医薬シーズライセンス事業の成長に期待する節があるだろう。
【課題】
同社の抗体の原材料となるカイコの生産に関しては、地元の養蚕農家との協業で地場産業の活性化にも期待できる。その仕組みを国や地方自治体にアピールすることで、助成金などを受けることも可能ではないか。
その他大学との連携なども視野に入れ、産学連携の体制を一段と整えられれば研究開発にも弾みがつくだろう。そのような取り組みを厚くしていくことで、安定的な開発力・経営基盤を整えられそうだ。
研究試薬は世界的に研究の多様化に対応する必要があるため、製品は多種類かつ一製品当たりの売上は限定的であるという特徴がある。競合他社との販売競争の激化もあって、価格低下に拍車がかかってきており、同分野での売上増加を見込むのは次第に厳しくなってきている。
それに対応するためにも自社での化粧品や食料品開発・販売なども検討し、自社製品の販売比率を高めるべき。安定した需要が期待できるこれらの製品が具現化すれば、同社の原材料需要も同時に安定する。同時に販管費比率も抑えて、利益率を高めることも可能だ。
足下ではキャッシュフローも安定化してきたことから、今後は成長に向けた第二ステージへの道筋を描きやすい。中期経営計画を達成するためにも、他社との提携や人員の拡充など、攻勢の施策への布石を打っておくべき段階であろう。
※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。