夕方。自分の車の周りの雪かきのために改めてスコップを持って駐車場へと向かいましたすると、私の隣の駐車スペースの女性が黙々と雪かきをしていましたお子さんらしい3歳くらいの女の子が、脇でその様子を眺めています。そして向こう隣のスペースの人に積まれた雪を恨めしそうに、後ろの雪山に積んでいました。帰ってきてみたら駐車場が雪に埋まっていて、駐車スペースを確保できない様子
私が近寄っていくと「隣の方ですか?」と尋ねられたので「はいそうです」と答えました。私はあまりにも山積みになっているその雪の量が気の毒になったので、何とはなしに隣の駐車スペースの雪かきを手伝いました。女の子が母親に「この人誰?」と非常に当然な疑問を投げかけていましたが、母親も何と答えて良いのかわからずに苦笑いで返していました
ただ、その雪かきの間も「すみませんねぇ」などと言われることもなく、黙々と雪かきが進みます。雪かきという作業は、人々から感謝の心を奪う冷たい作業なのでしょうか
そう考えながらふと頭をよぎったのは「この人、ひょっとして私が自分のところの雪を積んだと誤解しているのではないか?だから私がここの雪かきを手伝うのは当然と思っているのでは?」と。そう思うとにわかにいたたまれない気持ちになり「いやー、隣の人も酷いことしますよね」なんてわざとらしく違う事をアピールしようかとも思いましたが、あまりにもあからさま過ぎます
「そもそもご覧の通り、私の車はこの通り雪に埋もれたままでございます。私が犯人なわけなど無いではありませんか」と心の中で繰り返し、何とかテレパシー的に伝わらないかと試みていたのですが、当然ながら特段反応はありません最初に尋ねられたのは「(雪を取り除いた方の)隣の方ですか?」という意味合いで「はいそうです(犯人は私です)」と捉えられたのかも知れません
やがて、若い女性がやってきて「行こう」と母親に呼びかけました。関係性はよくわかりませんが、そう呼びかけられると母親はスコップを雪山に差して、皆で車に乗ってどこかに行ってしまいました去り際にもやはり私に「すみませんねぇ」の一言もありませんでした残された私は途端に止めてしまうのも嫌らしいので、しばらくは隣の駐車スペースの雪かきを続けていました。
すると、その駐車スペースに雪を山積みにした真犯人である、向こう隣のおばちゃんが買い物から帰ってきました。通り過ぎ様に私の顔を不思議そうに眺めて「あれ?ここあなたの駐車スペースなの?」とでも言いたげな感じで、一方でバツが悪そうにさっさと黙って通り過ぎていきました
後日談として、その後駐車場で偶然隣の母親と顔を合わせた際にも「この前はすみませんでした」などと一言もありませんでしたそんな世知辛い人間関係も明るみになる大雪が、私は本当に嫌いです(完)