久しぶりに帰宅した父はソファーに座りながらしばらくぼんやりとテレビを眺めていました。その間に私たちは夕食を食べます。
その間、ちょっと目を離すと父は座るのに疲れて段々体が斜めに傾き、ソファーからずり落ちてきます。その度に私と母は座り直させるためにせわしなく動き回っていました。
間もなくして「じいちゃんが4ヶ月ぶりに家に帰って来た」の報を受けて孫たちが押し寄せてきました。元々毎日のように病院に見舞いに行ってくれている孫たちですが、やはり今日は特別な日です。しかし騒ぎ立てる孫たちにまた疲れた表情を見せる父。
その日は結局孫も泊まっていく事になり、普段は母しかいない実家では父と母、私、孫と一気に人影が増えたのでした。
ある程度家を満喫した父はそろそろ眠たいとのことで、布団に寝かせる事になりました。また毛布を担架代わりに使っての移動です。孫たちも手伝い布団に寝かせる事に成功しました。
トイレに行けない父は紙おむつです。それを替えるのは母の役目。何だか私が手伝って良いのかどうか判断付きかねる部分もあるもので・・・。
一方、できるだけ小便は紙おむつでない方にしてもらいたいということで、病院でも尿瓶を使っていたのですが、残念ながら突然の帰宅に家にはなかったので花瓶を尿瓶代わりに使ったのでした。
その日はそれで無事就寝。病院の可動式ベッドとは異なり、布団は自由が効かないので、父の寝心地はいかがなものだったのでしょうか?
翌朝。起床後は父のおむつ替えからスタートします。そしてまた父をソファーへ移動。それから朝食の準備。その後父に朝食を食べさせます。私と孫はともかく、母は朝から大忙しです。
その後はなんだかんだで無事に過ごし、昼過ぎになって病院に戻る時間となりました。滞在時間は20時間でしたが、たまに病室以外の部屋で過ごすのは刺激になったのではないでしょうか。
帰りは大人しく車イス用のタクシーを頼む事になりました。やはり車に乗せるのは大変なもので。
間もなく到着したタクシーの運転手は女性の方でした。介護関連で重労働であるのに少し意外な感じがしましたが、話を聞くと車いす用のタクシーは予約がひっきりなしにあり、やっぱり大変なんだとのこと。タクシー業界も不況なのであれば比重を移せば良いのに。
そして病院に到着。あーあ、また戻って来たか、と思っていると父が突然「ここの病院じゃないよ」と言い出すのです。タクシーの運転手も「えっ」と驚いた顔をしていましたが、ここの病院に間違いはありません。私は「いえ、ここで大丈夫ですので」と運転手、父の両方に説明が必要になりました。
正直ちょっとショックでした。やはり父の症状は「見たものを脳は認識はしているけど出てくる単語を間違っている」のではなく、「認識自体が誤っている」ようなのです。医者は脳に異常はないとしていますが、となるといよいよボケが始まってきているのではないでしょうか。やはり度重なる手術で完治は難しいように思われます。
病室に戻って「第二の我が家」のベッドに落ち着いた父。一日帰ってどうだった?と感想を聞いてみると返って来た答えは
「やっぱり病院の方が良い」
というのです。意外な答えに「何で?」と聞き返すと
「皆に迷惑をかけるから」
と言うのです。
何だか父もすっかり弱気になってしまったなーというのが今回の帰省の感想でした。一方でそう思うならもう少しやる気を出してリハビリに励めよ、とも思うのですが、中々モチベーションも上がらないのでしょうね。正直なところもうしばらくは入院にかかりそうな感じです。
個人的にはもう少し回復してくれているかなと思っていたのですが、少々落胆を隠せません。母も今は大丈夫ですが、このまま行くと介護疲れも出てくるんじゃないかなーと不安ばかりが拡大してしまいました。地元をどんどん離れる電車の中で私はこの先どうなるやら・・・と色々考えさせられました。