KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

父帰る(前編)

先週は父の介護のため実家に帰省しておりました。男手である私が実家に戻らないと、自分で寝返りをうつこともできない父の身体を母一人ではとてもじゃないですが動かすこともできないため、現在施設に入っている父を実家に連れて帰って世話することもできません。なので今回5ヶ月ぶりに父を実家に連れて帰る事になりました。

先日も書いたように、父は「高次脳機能障害」と診断されており、手足は動くのですがリハビリの成果が思うようにあがらないのです。というのも障害の影響で集中力がなく、リハビリをやっていてもよそ見をしたりアクビしたりと続かず、そうこうしている間に時間ばかり費やして終了となってしまうのです。

すると筋肉が段々細ってきます。今父の足は骨と皮とタプタプの肉だけ。それではどんなに足が可動したとしても、自分の身体を支えて立つ事なんてとても無理です。ただ唯一の救いは、頭が比較的しっかりしている事。単語が時々出てこない事はありますが、受け答えは非常にしっかりできるようになってきました。

半年入院しリハビリしても成果の上がらない父はやがて病院を追い出され、施設に入れられる事になりました。というのも4月の診療報酬の改定でリハビリは「発症から最高で180日以内」という制限がかけられたからとのこと。確かに医療費負担が膨らみ続ける今のご時世、いつまで経っても成果の上がらないリハビリに無駄金を使うわけにもいかないということで致し方のない措置なのかも知れませんが、やはり自分の家族の身に降りかかってくると辛いものです。

父の移った施設は私はリハビリを専門とする施設と母に聞いていたのですが、実際にはただの老人ホームでリハビリは週に2回だけ。最近うちの地元でもたくさんの老人ホームが建設されていますがその比較的新しくできた老人ホームの一つで、父のように全く歩けない人、自由に歩けるが介護が必要な人、ボケてきてフラフラ歩き回る人、色々な方が入居していました。ご飯を食べ、夕方にはおやつを食べ、時々皆であつまっては童謡を聴きながらお遊戯をし、後はベッドで寝ているだけ。人は新生児として生まれてからから7,80年後には同じようにオムツを履き替えてもらったり、花の絵を描いたり、幼児と同じ扱いを受けるわけです。

少しでも父を家に帰したい私と母は、私が帰省している間だけでも実家に帰れるようにと準備をしました。電動ベッドを買い、テレビの見える居間を改造して大部屋にしてそこに入れ、玄関等の段差をできるだけ軽くしようとバリアフリー化したり。

そして父の帰宅。5ヶ月ぶりの我が家に感慨深そうな父。大きく目を開いて嬉しそうに、少し照れたように車イスに乗って戻ってきました。

車イスからベッドに移すとしばらく黙って天井を見つめ続ける父。家に戻ってきたからといって身体が動かないのであれば何をしようもありません。今回の父の滞在は2泊3日。この間、私はできるかぎり父にリハビリを施そうと考えていました。

健康な体の時はわからないものですが、身体は動かさないとどんどん動かなく硬くなっていくものです。私は顎の手術で入院し、たった3日間だけですがベッドから全く動けない状態になりました。3日経過しようやく地面に足を降ろした時の違和感。あれ?足が、関節が思うように動かないぞ。何かこわばった感じがして、少し力を抜くと膝から地面に崩れ落ちてしまいそうになります。

私の場合は数時間後には身体も慣れてきて、間もなく普通の生活に戻る事ができました。それが父の場合はかれこれ8ヶ月も続いているわけです。動けなくて当たり前です。

運動選手も1日休むと取り戻すには2日練習しないといけないと言います。筋肉はそれ程急激に弱っていくのです。であれば家に居てリハビリを休んでしまうとまた父が歩ける可能性が加速度的に小さくなってしまいます。私は今まで父の病院で見てきたリハビリを見よう見まねで父に施してみました。まあリハビリといってもマッサージをしたり、足を曲げ伸ばししたりするだけですが。

父は「痛い痛い」と言いながらも、私たちのやるリハビリに最後まで付き合いました。父だって歩けるようにはなりたいはずです。うまくいけばもう10年以上は生きられるのですから、余生は楽しみたいはずです。

本当は父がある程度仕事をする気も失せて、母と二人家でのんびり暮らす生活を選んだ時には旅行をプレゼントしてやるつもりでした。まあ旅行といっても世界一周とかいった派手なものではなく、全国の趣のある温泉巡りなんかを何回か。父は鉄道が好きで鉄道の写真集を買ったりしています。唯一私のテレビゲームで羨ましがったのが「電車でGo!」で、私が寝ている間にこっそりとプレステのスイッチを入れてやったりしてました(なかなかホームには止まれませんでしたが)。そんな父に全国鉄道の旅をプレゼントしたかったのです。

それが今では身体も動かないものですからプレゼントのしようもありません。「孝行したい時に親は無し」と言いますが、私の場合は幸い健在ではあります。杖をついてでも自分で歩けるようになれば御の字、せめて車イスに自分で乗り降りできるようになれれば何とか旅行もプレゼントできるのではないか。一度も親孝行しない間に逝かれては困ると思いました。

一方、これは単に私を含めた周りのエゴや満足感を得るだけのものなのかなとも思います。本人のリハビリで痛がる顔や疲れた顔を見ると、そこまでして歩けるようになれば勿論良いのですが、必ずしも歩けるようになるとは限らないわけですから、本人はひょっとしてもう諦めているのに周りが「リハビリリハビリ」と言うから付き合っているだけなのか、こんな痛い思いをするならいっそ諦めてしまいたいと思っているのかとも思います。父が本当はどう思っているのか知りたくもありましたが、逆に知ってしまうのが怖くもありました。(来週につづく)