KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

鉄は熱いうちに

良い人ぶるわけではありませが、自分なりの禁忌として「ポイ捨てしない」「ジジィ、ババァと言わない」というのがあります。他の小ずるい事はいっぱいしてますけどね(;^_^A

「ポイ捨てしない」の方は保育園の頃にアイスの袋をポイっと捨てようとした時に親に「今まで一緒だったアイスと袋がこんな所で袋だけ離ればなれになるのは可哀想でしょ」と言われたのを「あぁ、そーかー」と今は無いピュアハートで信じてしまったからです。それが心の中に残っているんですね。今言われたら「じゃあアイスの棒と袋を一緒にポイ捨てすればいーやー」とか思うんでしょうけど(-。−;)性格が出来上がっていないうちにマインドコントロールされました(;^_^A

「ジジィ、ババァと言わない」という方は原因はあんまり覚えていませんが、何か年上に向かってすっごい暴言のような気がするんですね。皆は普通に使っているようですが。うちの甥がガラの悪い幼稚園で覚えてきてクソガキのくせに「うっせー、クソジジィ」とか言ってきたので半殺しにしたろーかとか思った事があります\(*`∧´)/

皆さんにも多かれ少なかれ意外な禁忌があるのではないでしょうか。ちょっとした信仰のようなものに似ているのかも知れません。

さて、本日は日曜ですので小説の日です。前回までの分は毎週日曜のブログを参照してください。


                      正義のみかた

第六章 白っぽい空気

「・・・動かなくなった幸恵さんをそのまま放置し、直後に昼寝から目覚めて傍らで泣き出した来未ちゃんも黙らせようとそのまま首を絞めて殺害。その後家中を物色し、財布から現金やカード類を持ち出して逃亡した・・・間違いないかい?」
表面上は冷静さを取り繕ったつもりだったが、彼に見えない部分で左手は強く汗を握りしめていた。小刻みに震えている私に敦君は気づいていただろうか?うつむき加減に私の手元を見ていたから気づかれたかも知れない。しかし心ここにあらずの状態で事件当時の様子を思い出しながら一つ一つ肯いていた彼の目には、映っていたもの何一つ頭の中に入ってきていない様子であった。

「さてこれだけの事件だ、家庭裁判所の審判ではおぼつかない。家庭裁判所から逆送、地方裁判所での刑事事件扱いとなるのは間違いない。最大で無期懲役、少なくとも10年は少年刑務所の中で生活する事になる。幸い・・・と言っては何だが、君はまだ少年だ。少年法に守られている。だから死刑になることはない」
「さっきも刑事さんに同じ事を言われたよ」
上目遣いにこちらを見ながらポツリつぶやく。

「君はそれを知ってて殺したのかい?」
洋子と梓を。そう続けそうになって一瞬とまどった。この質問は職務上の質問というよりは、敦君と洋子、梓を殺した少年をダブらせてその心境を知りたかったに違いない。
「知らなかった・・・と言えば嘘になる」
そう、少年法は有名だ。新聞を読んでいなかったとしても耳にはしているはずだ。「子供は人を殺しても罪にならないんだぜ」中学生頃に友達内で一度位は話題になるものだ。そしてそれは間違っている。「罪にならない」のではない。「罪は罪だが更正の余地があると捉えられるから重刑にはならない」という意味だ。所詮子供の会話である。私の子供時分にも似たような事を言っていた覚えがある。

「なるほど、君は知ってたんだね?」
「・・・」
何も言い返して来ない少年に無性に腹が立った。間髪入れずに語を繋ぐ。

「つまりは軽い気持ちで、どうせ殺して捕まっても自分は生きていける。何年か少年刑務所で過ごせば皆が忘れた頃に社会復帰できると・・・」
「違う!そんなんじゃない!!」
顔を思い切り上げ、私の目を睨み付ける。私も睨み返す。それを傍らで見ていた監視役の警官は少し驚いた様子だった。数瞬の後、私は一つ咳払いし「失礼」と小さく言った。気まずい空気だけが接見室内に漂った。

私がすべき質問事項からは逸脱してしまったようだ。私は彼を責めるために来ているのではなく、仕事としてやって来ているのである。そして弁護のための材料を集めなければならない。今の質問は全く私の興味本位のものだった。

「すまん、忘れて欲しい」
「・・・チッ」
舌打ちすると共に敦君は顔を横に背ける。二人の間にしばらく嫌な沈黙が続く。

冷静に。ここは冷静になれ。お前はここに何しに来ているんだ?これは仕事だぞ。彼の弁護人なんだろう?まずは彼の信頼を得て状況を把握しないと裁判を有利にする材料は何一つ得られないじゃないか。

「君がどういう動機で若葉さん一家を狙ったのか確認したい。まずは金品の強奪が目的だったとしても、若葉さん一家を選んだ理由は何かあるのかい?」

たっぷり10秒程間をおいて敦君は応えた。
「最初から殺そうと思ってあの家に入ったわけじゃない。街で見かけた時にふと思ったんだ。うちのババァに似ているって」
「似ている?ババァって?君のお母さんの事?」
彼の家族構成は父親、姉、そして敦君となっているようで、父親である雄三氏が男手一つで姉玲子さんと敦君を育て上げたようだ。私は用意してきた敦君の家族に関する資料に目を落とした。

「君の家族の事は聞いてある。申し訳ないが君の弁護をするための材料として家族背景は必要だから確認させてほしいんだ。いいかい?お母さんは君がまだ小学生の頃に離婚し家を出て行った。お姉さんと君はお父さんの下で生活する事になった、ということだけども・・・」
敦君が少し身構えたような素振りを見せる。私はそれに気づかないふりをして資料を読み続けていた。