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13年5月4日現在
3ヶ月以内投資判断 「やや売り」
買いのタイミング 本決算発表後。ただし今期見通しがマイナスに捉えられるなら1300円の押し目待ち
3ヶ月以内株価予想 1250円~1850円
要点
・業績的には最悪期は脱出。利益率の高い医療分野を育てていきたい。今期は円安効果も手伝って増収増益は見込めるものの、モバイル分野の赤字削減が課題。
・テクニカル的には今週決算で上下どちらに振れるかが分かれ道。需給面では歴史的な大底は打ったと見られるも、短期的にはやや上値の重さが意識。
・国内他社比ではやや割安な印象。
・赤字の縮小だけではなく、ブランド力の回復に注力すべき。
【企業概要】
AV機器大手。ブランド力があり、ゲーム・映画・金融など事業を多角化。医療機器事業に本格参入。
【売上構成】
HE&S(一般家電) 16%
モバイル 17%
金融(SONYFH(8729))14%
IP&S(カメラなど) 11%
映画 10%
デバイス(半導体など) 9%
ゲーム 8%
音楽 6%
その他 7%
【業績】
前期は大幅な増収増益の見込み。ソニー・エリクソン完全子会社化分が通期寄与することなどで増収を確保。更に円安効果や金融分野が足元の株高で大きく改善したこと、また保有資産の売却から先日上方修正を発表した。
今期も引き続き増収増益が見込まれそう。日米の景気回復期待感から、販売計画は前期よりは上積みの余地があると見られる。円安ウォン高進捗によってライバルサムスンに対する価格競争力が付いた点も追い風。また、足元で一段と回復基調を見せている金融分野の上積みも期待できる。
利益率の高いイメージセンサーと映画、金融で稼ぎ、その間に他の事業の赤字縮小を目指していく形に今期もなりそう。
特に完全子会社化したソニーモバイルは前第三四半期時点で700億円以上の赤字を出しており重荷。AppleのiPhoneやサムスンのGALAXY Sに対抗できる製品が無く、スマホの世界シェアは4位と言えども、数字上は上位2社に大きく溝を開けられている。ここからの巻き返しが期待される。
一方で期待が持てるのはオリンパスとの医療事業合弁会社の設立。今後は利益率の高い同分野での成長を取り込んでいくことで、事業構造の大転換を図っていたい。
14年3月期第一四半期予想(KA.Blog)単位:百万円
売上 1609000
営業利益 19800
経常利益 22500
当期純益 -15500
想定為替レート ドル95円、ユーロ125円
業績に与える為替のインパクトは、ドルベースでほぼ完全に中和しているものの、ユーロベースでは1円円高で60億円の営業減益要因に。
第一四半期は季節要因的に例年最も進捗率が低く(売上ベースで平均22%)、この段階で今期会社計画が達成されるかどうかを推し量るのは難しいだろう。
また、引き続き本業の回復が明確化しない中で、オリンパス(7733)に対する出資などから事業構造の大胆な変革を企図しているものと見られる。そのため家電事業再編に伴う追加費用負担が出てくるリスクもある。
有利子負債は1.4兆円で前期から2145億円増加
有利子負債比率(有利子負債÷自己資本)は68.9%
現預金は6980億円
流動比率(流動資産÷流動負債 ×100)は81.9%で前年の82.9%から悪化。
財務体質は悪く無いが、赤字が続く中で少しずつ悪化している印象。そのため資産の切り売りに動いている状況とも。
フリーキャッシュフローは5007億円の赤字
前の期に比べて営業損が発生したことなどで営業キャッシュフローが悪化。投資キャッシュフローはオリンパスに対する出資から赤字が拡大。トータルで1773億円赤字が膨らんでいる。
粗利率は34.2%で、前の期の33.0%から改善。
予想ROAは1.7%で、前の期の-0.6%からは改善見込み。
各分野での赤字縮小が奏功し、利益率などには改善傾向が見られる。
ファイナンスに関しては、昨年末に既に1500億円の転換社債を発行したことで、当面は行われないものと思われる。
【主なアナリストの評価】
JPモルガン 「Neutral」 目標株価 1600円
エムスリー(2413)株や大崎ビルといった資産売却が上方修正の主因で、本業の回復は円安があっても限定的。
【理論株価】
買収価値を示すEV(時価総額-現預金+有利子負債)は2.3兆円。今期予想EBITDA(営業利益+減価償却費)は5600億円であり、結果EV/EBITDA倍率は4.2倍となる。同業他社の平均値はおよそ4.5倍と見立てられ、それらを元に計算した理論株価は1809円となり、現状の株価は事業価値分析上は割安と捉えられる。
【株価推移】
リーマンショック後の戻りは鈍く、超円高水準が継続する中で、ウォン安を背景にサムスンなどの韓国勢が急速に台頭。国際的ポートフォリオの相対比較で売られる形になった。
昨年は一時33年ぶりの安値を更新するほど売られたが、11月の衆院解散宣言後は地合に合わせて順調な下値切り上げ相場となっており、概ね指数や為替に連動。足元では倍化の流れとなっている。
【テクニカル】
各移動平均線を上回り、上値は軽くなっているところ。ただ1600円到達以後は一ヶ月半ほどの間横ばい推移が続いている。
日足ベースのMACDやパラボリックは暗転。一方、一目均衡表の雲に下支えられるような格好で下値固めに入っているところ。ストキャスは割安圏を示し、ボリンジャーバンドも-2σに達してきたことから、短期的には反発局面にあると言える。
週足ではMACDが転換点に近く、一目均衡表でも遅行線が雲を抜けるかどうかの瀬戸際。タイミング的に9日の本決算発表で、長期トレンドの方向性が決まってしまいそうな立ち位置。
一方、事業構造上ユーロ円相場に連動しやすく、ユーロ円が140円を超えてこない限り、大きく上放れするような流れは想定し辛い。
確度としては決算後は一旦下向きの流れになる可能性が高そう。その場合の下値メドはこれまでの上昇波動(昨年11月安値772円→3月高値1735円)の半値押し水準1250円辺りか。200日線などの兼ね合いから、1~2ヶ月はゆっくりと下値を模索する流れになると見る。
【需給】
長期的には2000年ITバブル以降の下落トレンドから未だ脱しきれていないが、年初からの出来高の急増を見ると、歴史的な反転局面入りしている可能性は十分に考えられる。
一方、信用買い残も11月の相場反転以後積み上がっている格好で、今年2月にピーク。差し引き2800万株まで膨らんだ。その後、少しずつ整理が進んだが、3月に高値を付けた後は再度増加基調に。
日々の出来高で十分こなせる量ではあるものの、一旦は整理に時間を要する段階か。上放れにはここから一段と流動性を増やすきっかけが必要。なお、昨年末に発行されたCB1500億円分は転換価格をとっくに上回っているため、既に希薄化は生じているものと考えられる。
【同業他社比較】
同社の予想PERは41.1倍。PBRは0.9倍
前期予想営業利益率は3.4%、予想ROEは2.0%
配当利回りは1.5%
同業他社と比較すると、それぞれどのような位置付けだろうか。
パナソニック(6752)
主力の家電では同社と両雄。三洋電機の子会社化で電池などのエネルギー事業に注力。住宅設備などにも力点。
前期は赤字見込み、PBRは1.4倍
今期予想営業利益率は1.9%、予想ROEは-57.1%
有利子負債比率は113.4%
配当は無配
同社よりも再建の道筋が遅れており、株式価値的にも割高な印象。同社と同じように保有株の売却など資産の切り売りで最悪期を乗り切っている。
シャープ(6753)
液晶、携帯では国内最大手。太陽光などにも注力だが、それぞれ価格下落に見舞われて大苦戦。サムスンからの資本を受け、再建を図る。
今期は赤字見通し。PBRは1.7倍
今期予想営業利益率は-6.3%、予想ROEは-215.4%
有利子負債比率は550.2%
配当は無配
利益率や財務体質などは悪く、各方面からの支援が無いと再建困難な状況。株式的にはやはり割高で、今後のファイナンスリスクなども内在。
サムスン電子
韓国財閥系の総合電機メーカー。韓国のGDPの約1/4を占める巨大企業。
予想PERは10.0倍、PBRは2.2倍
営業利益率は16.6%、ROEは21.6%
予想配当利回りは0.5%
スマホでAppleと2強の様相を呈しており、利益率が高い。株式的には割安感があるが、今後のウォン相場に業績が左右されやすいとされる。
同業他社との比較では、国内では概ね割安感がある印象。ただしライバルと目されるサムスン電子との比較では利益率が低く、また事業的にも立て直しが急務であり、今後円安を利用して差を縮めていきたいところ。
【課題】
テレビ事業以外にも、モバイル事業やゲーム事業に関しても今後が気になるところ。ソニーモバイルの赤字が最も大きく、今期はモバイル分野の赤字削減に注力する格好になってこよう。
また、PS4発売を控えて製造原価が価格を上回る逆ざやに対する懸念が高まっている。発売されて1年半経過した「PS VITA」も未だ逆ざや状態が解消されておらず、専用機冬の時代を越すのはまた険しい道のりになりそうだ。
また「PS VITA」は性能上、既にスマホと同程度の能力を有しており、しかも2万円程度とスマホより安価に購入できることから、販売戦略上ターゲットが競合する恐れがある。このモバイル事業とゲーム事業を垂直統合して、携帯型マルチメディア端末を開発する方が有意性を示せそう。完全子会社化によって機動的な施策が採れるのであれば、その辺りに活路が見出せるのではないか。
長期的な視野を持つなら、多少赤字を出してもブランド力の維持に力点を置くべきではないか。もともと「SONY」というブランドは音響機器などにおいて当時画期的な製品を出すことで、特に海外で大いに受け入れられた。スティーブ・ジョブズもSONYに憧れていたことは有名。
結局、現在の株価下落は、そのブランド力の剥落分とも考えられる。投資家に夢を与えられることができなければ、株価も上がりようが無い。一方、ブランド力が高まれば、全事業に与える相乗効果は計り知れないものになる。今のソニーに必要なことは、消費者や投資家にワクワク感を与えられるようなSONYを冠する商品を世に送り出すことである。
※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、正確性や投資成果を保証するものではありません。