前回のソフトクリエイトのフォローに引き続いて、今回はポートフォリオで二番目に歴史の古いソネットエンタテインメント(3789)のフォローをしたいと思います。
【概要】
ソニーの子会社として1995年に設立。かつてポストペットとしてブレイクしたモモで有名なネット接続プロバイダSo-netと、ポータルサイトの運営を主業務としています。売上構成比率は2:1の割合。傘下に東証1部上場のソネットエムスリー(2413)とDeNA(2432)他、多数の企業を保有しています。
【業績】
FTTHの光接続中心で接続事業は440億円の売上。ポータル事業は219億円程度の売上となっていますが、その中で子会社エムスリーのものが4割を占めています。上場以来積極的な投資を行って、業績は右肩上がり。配当性向は20%を目標で、前期は3000円の予想。
来期(10.3)予想(KA.Blog)
売上710億円 営業利益70億円 経常利益80億円 最終利益 38億円 配当年3000円
四季報予想よりはやや落ちるものの、全体としては順調な増益見通しであり、成長戦略に陰りはありません。
子会社エムスリーの好決算が先に出ていますが、同社はメビックス(3780)の買収もあって業容の拡大が続いています。また医師向けのサイトである「MR君」は日本の医師の4割が利用しており、富裕層に特化したターゲッティングマーケットに利用できる鉄板サイトを持っていると言えます。この辺りも親会社の業績に後々寄与してくることでしょう。
また今期で3ヶ年計画が終了し、今期の終わりには次の3ヶ年計画の発表を予定しています(まだ随分先の話ですが・・・)。この辺り強い見通しが出てくれば、株価に大きな影響を与えそうです。
【今後の見通し】
既存のブロードバンド環境に関しては加入者は頭打ちになる事が目に見えてきており、従来の事業以外の分野に注力する事が必要になってきます。その場合現段階で考えられる選択肢としてはモバイルでの高速回線、また海外への進出(現在具体的にはso-net台湾に進出)に力を入れていく事になります。
so-net台湾は当地の最大通信事業業者である中華電気通信有限公司と資本業務提携し、台湾におけるブロードバンド接続業拡大に注力しています。まだ台湾ではFTTHの比率が少なく、業容拡大の余地があります。
ネット接続事業よりも注力し、伸びしろのあるのが片輪の事業であるポータル事業ですが、中でもTOBによる買収で獲得したゲームポットを中核とするオンラインゲーム事業が期待分野。海外に子会社を設立し、同分野で海外展開を見込んでいます(あの世界的に有名な「ウィザードリィ」のオンラインゲームも10年開始予定)。
その他広告事業やソリューション事業もありますが、この辺りの伸びしろは大きいものの、既にシェアの大きいライバル企業の牙城をどうやって崩していくかが課題に。当面は収益に対する寄与も限定的でしょう。
ともあれ主力の接続事業に関連する周辺事業を拡大していくことにより、各々の分野で相乗効果を期待できる環境を整えていくと言えそうです。
【保有株の価値】
事業以外には、子会社として保有している株式の価値に注目。上場企業ではエムスリー、DeNAの第一位株主として支配下に置いており、両社の好業績は周知のとおり。その他非上場企業ではアクトビラの株式を25%保有しており、パナソニック(6752)に次いで第二位株主。ここはネット動画のオンデマンド配信事業を行っており、これからの地上アナログ放送打ち切りや多チャンネル化に向けて、勢力を拡大できるジャンルでもあります。株式市場がもう少し回復して来れば、IPOを通じて知名度向上・持ち株の含み益増加に繋げる事ができそうです。
昨日も載せたように、当ブログでは毎月の成績発表の際に「上場株式のみで評価した一株当たりの株価」というのを算出していますが、その数式は単純に(上場保有株の持ち株分時価総額総計/同社の発行済株式総数)となっています。分子に来るのは現在のところエムスリー、DeNA、ゴンゾ(3755)及びゲームポットですが、ゲームポットは現在非上場になったため、上場時の最終株価108000円で評価しています。しかし実際にはゴンゾ、ゲームポットの時価総額は小さいため、ほとんど影響しません。
これを算出する事によって何がわかるかというと「同社が本業を全く行わずに、単なる純粋持ち株会社として一株辺りどのような価値を有するか」ということです。いわば会社の解散価値のようなものですが、それによると現在では33.5万円という数字になります(昨日載せた価格は算式に誤りがあったので、こちらの価格に修正します。申し訳ありません)。勿論実際に売却するとなると、市場の価格よりも随分ディスカウントされる事になりますが。
それに対して現在の株価は231500円。これは他に保有している非上場の企業の価値は勿論のこと、前記した本業の接続事業やポータルサイト事業であれだけ利益をあげているにも関わらずにそれらが全く評価されていない事を意味しています。
PBR1倍割れの企業がゴロゴロしている昨今ですが、それにしても現在の評価は理論的に間違っている事を顕著に示しています。
【株価推移】
好業績が続いているにも関わらず残念ながら株価は上場時をピークに下落の一途を辿っています。幸か不幸か上場があのライブドアショックの一ヶ月前である2005年12月であったため、株価の需給は悪化傾向が続き、なかなか上場時の水準を上抜く事ができません。最高値から一時1/4以下にまで下落した場面も。
以後株価は市場の落ち着きと共に戻り歩調。足下では一目均衡表の雲を突破して20万円越え。短期的には上昇トレンドに乗っています。ただ週足で見ると25万円というところが一つの上値の目処になりそうです。そこには週足で見るところの52週線と一目均衡表の雲下限及びボリンジャーバンド+2σ、そして昨年10月の急落以降の戻り高値水準で、3回もトライした244000円が控えます。丁度決算前までにこの水準まで上昇し、それから決算で上下どちらに振れるかという事になりそうです。
しかしながらここで余程投資家を満足させる決算内容が出ない限り、突破よりも正直下放れする可能性の方が高いと思われます。問題はその後の株価推移。重要なのはここでダラダラと下げるか、一時の調整を経てトレンドを再度上向きに転換できるかということだと思います。決算の内容が余程悪くなければ株価は調整があったとしても一時的で、全体相場にも乗る形で上昇に向かうでしょう。現在売り長である信用倍率も、株価の下支えとして機能しそうです。ちなみに同社は東証1部に所属しながらも、かつての所属市場であるマザーズ指数との連動性の方が高く、マザーズ指数高に乗る形が見込まれます。
現在残念ながら市場の注目度は高いとは言えません。出来高ベースでは1000株に乗せるのがやっとというところ。やはり現在の5倍位の水準、つまり5000株/日ペースの出来高が平均して出来るようになって、ようやく注目されてきたと言えるのではないでしょうか。その程度盛り上がりを見せるようになれば、株価は一気に勢い付くでしょう。
【問題点】
まず主力のISP事業については、既に日本全体で2600万件のブロードバンド加入となっており、伸びしろが少ない事。それに対して課金は増額の余地は無く、むしろADSLに比べてまだ顧客獲得コストが少なかったFTTHの競争激化により、減額余地すらあります。よって売上高の伸びに比べて営業利益率の伸びは小さくなってくるでしょう。同社の会員数も毎期10万件ペースで増えているものの、次第に頭打ち感が出てくる点は否めません。
また超長期的にはPCのブロードバンドの加入すら不用という世の中に向かいそうです。携帯を中心とするモバイル端末で十分に高速なネット環境が整う世の中になれば、ヘビーユーザーは別として、ライトユーザーはパソコンを持たなくなってくると思います。その場合既存のISP事業は成り立たなくなってくるでしょう。ただその場合は大手である同社等は残り、小さなところから撤退していくでしょうが。また同社もこの辺りは問題点として認識しており、既に海外進出やモバイル分野の開発に動いています。
ポータル事業においては特段問題点は見当たらず、これから拡大余地のある期待のセグメントであると思います。強いて言えば前述した現在シェアの薄いジャンルやコンテンツ及び海外進出において、顧客のニーズやシェアに見合わない費用をかけ過ぎて、不採算になる恐れが生じることでしょうか。ただこの辺りはどの企業においても共通の問題であり、それを言い出すと成長が止まってしまいますが。
そして親会社ソニーの業績動向も気にかかるところです。世界同時不況の中で立て直しを急いでいるところですが、もたもたしている間に他社の勢いにブランド力を削がれる事になれば、天下のソニーといえど安泰とは言えません。同社の業績にもソニーブランドによるところが少なからずあり、株価もソニーと一部連動しているところがあります。ソニーのV字回復が成立するかどうかが今後の株価動向を左右します。
現在大株主であるソニーやソニーファイナンスが戦略の見直しや構造改革の一貫として保有株を売却してきた場合、市場の需給のバランスを崩す一因となります。ただそれは一方で市場流動性が高まることにも繋がり、一概に悪い話とも言えません。逆にソニーの支配力が弱まって買収の話が出てきたりすると、既存株主にとって有利に働く可能性すらあります。
以上の問題点は目先2、3年は考慮するに値しないでしょうが、長期的には認識しておかねばならない問題であると思われます。そして現在はそれを凌駕できる成長性に期待を持てるところだと思います。
※株式投資は自己責任でお願いします。文中の内容は現時点で予測できる範囲で想定されたものであり、投資成果を保証するものではありません。