KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

枯れざくら~昔の防衛大学校物語 神経衰弱

防衛大学校話の続きです。
http://www.ric.hi-ho.ne.jp/joeshow/KA.Blog/20210504.html


土曜に異例の整列点呼が行われ、我々は特に問題無く解散。特に非常呼集の理由も告げられませんでした。その後、部屋に戻った後に小隊一の噂好き早耳筋が「おい、聞いたか?学生会館から飛び降りが出たらしいぞ」と教えに来てくれ「えぇ」と我々は絶句。

防衛大学校という小さなコミュニティで、話はあっという間に広がります。非常呼集の点呼は自殺者(行方不明者を)特定するためのものだったのです。詳しく聞くとA君と同じ中隊の1学年でした。

先にも書きましたが一緒に富山から電車に乗って防衛大学校に入校したA君が、その厳しさから毎晩実家のお祖母ちゃんに電話をかけて泣き言を言い、お祖母ちゃんが毎晩電話がかかってくるのが嫌だった・・・という逸話がある程に厳しかった中隊。それ故に招いてしまった悲劇だったと思われます。

私はどうでしょうか?自分で振り返ってみて、幸い自殺しようと思う程に追い込まれたことはありませんでした。というより、自殺するくらいなら辞めようと思えるので(実際に辞めようとしましたし)、まだまともな精神状態を保てるだけの余裕がありました。しかし自殺した彼はそうできなかったのです。彼なりの辞められない何らかの事情があったのかも知れません。

他人に彼の気持ちなど知る由もありません。そもそも名前も知らない程に面識が無かったので、彼の性格も、一体どういう状況で、何がきっかけでそうなったのかはわかりません。ただ一つ言えるのは、例えばマラソンを走っていて苦しくなってくると視野は狭くなります。もう本当に目の前の真正面の風景くらいしか見えず、周囲に気を遣うことはできなくなります。

それと同じように、本当に精神的に苦しい状況に追い込まれた時には視野が狭くなり、正常な判断が出来なくなり咄嗟に行動を起こしてしまう。人間であれば誰でもあり得る性質です。もし本当に上級生の指導が厳しかったことが原因ならば、その厳しさは1年間乗り越えれば終わる話です。2学年になれば大隊も変われるので上級生も変わりますし、扱いも1学年に比べて随分楽になりますから。

ところがそういう理屈や合理性で考えられなくなってしまう視野狭窄。実際に自殺を考えるのと実行するのには1万光年もの開きがあるはずなのに、それをワープして超越してしまう瞬間、そういう「魔が差す」瞬間は誰にでも訪れます。たまたまこれまで私に起きなかっただけの話かも知れません。

また誰かに相談できれば、自分でため込むことなく、口に出して苦しさをはき出してしまえば随分と結果は違っていたのかも知れません。私は弱音を吐けるタイプの弱い人間だったのが幸いしていたのかも知れません。そして一部の上級生には可愛がってもらえるタイプの人間だったので、まだ救いがありました。

これは何も防衛大学校だけの話ではなく、学校でいじめられたり、あるいは職場で辛いことがあったり、家族と些細なことで言い合いになったり。人生の様々なステージでどの組織に属していても、我々は常に人と上手くバランスを取りながら生活していないと、風に強く煽られてバランスを崩してしまうことがあり得ます。

ですから、精神にはしなやかさが必要です。あまりに硬直するとポッキリ折れてしまう。芯が強く無いならそれを自覚して、柳のような柔軟さで強風が吹いても多少自分を曲げて受け流せる技や技術を体得することが必要です。これは完全に追い込まれる前に自覚する必要があるので、非常に難しい話ではあるのですが。(つづく)