KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

いっせーのーせっ!・・・あぁ、ムリムリ

大学時代の話。グループ対抗で水泳競技会があり、負けたチームは「10mの高さの飛び込み台からジャンプ」という罰ゲームがありました。幸い私のチームは勝利チームだったので罰は受けずに済みましたが、実はちょっと飛んでみたかったり(;^_^A

でも予め言っておきますが私は超高所恐怖症です(・・;)カレッタ汐留の展望台なんて怖い怖い。東京タワーの展望台に地面に透明な板を張って歩けるようになっている部分があるんですが、そこなんて思い出しただけでも身震いします。でも怖いくせにちょっとは歩いてみたくなるんですよ。これが人間の好奇心ってやつですね。脂汗流しながら一歩だけ歩いてみました。ただし手すりから手は離れませんでしたけど(;^_^A子供達はキャッキャ良いながら走り回ってんの。それを見るのもまた怖いんですけどね(・・;)

さて、飛び込みの話に戻りますが、皆意を決して「ええい、ままよ!」ってな感じで飛び込んでました。でも数人、どうしても無理な人達がいました。彼らは普段決して臆病な方ではないので個人的には意外でしたが、気持ちは良くわかります。頭では「飛び込まないと」と思っていても体が動かないのでしょう。飛び込み台の上から10分程度しゃがんで水面を見つめていましたが、ついに飛び込めませんでした。

人間は11mの整数倍の高さで恐怖を感じるそうです。11mの次は22m、33m・・・おぉ、想像しただけでも・・・ブルブル(・・;)その飛び込めなかった数人は皆に「チキン野郎」という視線を受けながらショボショボ降りてきました。そんな屈辱を甘んじて受けても構わないと思ったんでしょうね。本当に気持ちは良くわかります。

そんなくせにバンジージャンプは一回やってみたいなーと思う私です(;^_^Aでもどちらも思っているだけで、実際に飛び込み台の上に立ったら足が震えて動かないんでしょうね(-。−;)幸い(?)そういう機会はありません。

さて、今日は日曜ですので小説の日です。前回までの分は毎週日曜のブログを参照してください。


                       台風一過

第十六節 藍の逃避行

「ど、どうしよう?」
おびえた藍を置いて一旦玄関へと向かった。そして靴を二人分持ってくる。さすがにドアの覗き穴から外を見る余裕はなかった。ドアはいくらなんでもそう簡単には開きはしないだろう。だが出口は玄関一つしかない。通常の生活では。

ベランダの窓を開け靴を並べた私に藍が不審な声を上げる
「どうするの!?まさかここから飛び降りるの!?」
うちのマンションは設備だけはきちんと基準を満たしており、火災などの際に使える緊急用のハシゴはベランダに備え付けられていた。自転車の鍵を持ち、ハシゴを外に降ろす。

「さあ、早く降りて!」
「私怖い・・・」
確かに5階から見下ろす地面には恐怖感がある。人間が一番恐怖を感じる高さは11mだと言われ、スカイダイビングが平気な人でも怖いという。5階は丁度その高さに近い。私もシラフでは遠慮したいところだ。だが背後からはより悪意に満ちた恐怖が迫ってきている。いわゆる前門の虎後門の狼という状況だ。しかし選択の余地はない。先に私が降りるわけにもいかず、藍に降りるようせかすが、藍の体は震えたまま動こうとはしない。しばらくベランダで躊躇していたが、ドアを叩く音がより硬質的になった。何か廊下にあった金属状のもので手当たり次第ドアを破壊しようとしているのだろう。

「早く!!」
怯えた顔を引きつらせながら、藍は観念したかのようにハシゴを下りていった。さすがに地面までは届かないため、一旦3階の住人のベランダを経由せねばならない。藍が3階に着いた所を見計らって私も3階のベランダへ降り立つ。そこの部屋から再びハシゴを地面まで垂らす。こんな真夜中にこの部屋の住人の許可を取るのも迷惑な話であるから黙って使わせてもらったが、部屋からは物音一つ聞こえない。ベランダのガーデニングから人が住んでいるのは明かであるが、別の場所に避難していて単に留守なだけなのか、暗闇の中カーテンの向こう側で起きている不審な出来事にただ体を小さくして怯えているだけなのか。あるいは何か不吉な事情があるのか。部屋からは人の気配が感じられない。

3分後、二人とも無事地面の上に降り立つことができた。自転車の後部に藍を乗せ、再び自転車による逃避行に移ろう・・・としたその瞬間。外に面した5階の階段踊り場から
「待て!どこへ行く!?」
と大きな怒鳴り声が響いた。暗くて顔は勿論、姿もはっきりと見えなかったが、声の主の正体は明らかだ。私は黙って自転車をこぎ出す。藍が私の腰に回した手に力がこもる。こもり過ぎて正直息苦しかった。兎にも角にも一刻も早く部屋からは遠ざからなければならない。行くアテもないまま、ただひたすら自転車をこぎ続けていた。

時計も何も持ち出して来なかったため、正確な時間はわからないが、少なくとも午前2時は回っているだろう。ようやく人気のない公園で一休みする。あまり人気のない公園も危ないが、どうせ人気があったところで誰の助けも期待できない。それならばせめて人がいない方がまだ安全というものだ。

適当なベンチに二人で座り今後のことを相談する。まずは目的地に関してだ。ただ、相談といっても藍は震えながら呆然としているのみで提案を期待できる状態ではない。そして私の方も特にこれといってアテはない。

「私もう帰りたい」
藍が涙声に震わせながら訴える。
「帰るっていったって・・・」
帰るといっても最早藍の部屋も私の部屋も安寧の地とはなり得ない。そのことは藍も承知しているはずだ。となると残されるのは・・・

「実家に帰りたいか?」
「・・・」
実家は非感染地域であるから安全なのは安全だ。ただし、そこまで辿り着ければの話である。感染地域認定されている地域から非感染地域の境では警察や武装した自衛官による封鎖が行われている。民間人の異なるエリアへの移動は例外なく禁止されており、簡単に通れるものではない。突破するとなれば相応の覚悟が必要である。

私もさすがに悩んだ。検問を突破するとなると重犯だ。かつて圧迫に耐えかねた群衆が一挙に突破を図ろうとしたが、催涙ガスにより鎮圧されたというニュースがあった。事態を重く見た政府はみだりに境を侵す人間への発砲を許可した。場合によってはその場で射殺される可能性すらある。感染被害を拡大させないために前例のない強行措置をとるということだ。

だが、それでは一体私たちに他にどういう選択肢があるのか?部屋に閉じこもってひたすらワクチンの完成を待つというのが皆の基本方針であるが、その閉じこもる部屋がない。この公園にも存在する浮浪者のように仮の住まいを作ってその場をしのぐか?しかし食料品などの調達は望めそうにない。現在食料品を始めとする生活必需品の不足は深刻だ。どの店舗にも最早食料品は並んでいない。流通がストップしているからだ。一部地域では配給が始まっている。

前門の虎後門の狼の状況はある意味変わっていないかった。進退窮まった私たちの選択は・・・
「よし、逃げよう。」
「逃げるってどこへ?」
「藍の実家へ、さ」
「でもどうやって?」
藍の実家は山形のとある町であるが、今度近隣の市町村が合併し大きな市として再スタートするらしい。それはともかく突破の方法であるが、いくら公的機関が境を封鎖しているとはいえ、道なき道の山のどこかに必ず死角があるはずだ。その間隙をぬって突破するしかない。

とりあえずは藍にその旨を簡単に説明し、一旦用心しながら藍と私の部屋に戻り、出発の準備を整えることにした。平井もいつまでも私の部屋の前に居座り続けていることはないだろうし、数十分程度準備する位の時間は大丈夫だろう。

一度藍の部屋に戻り必要な準備を整えさせる。所持品はある程度の着替えと、食料品、携帯、財布など必要最小限のものに限り、服装もジーパンにスニーカーと軽快に動ける格好にさせる。

藍の部屋から私の部屋に移動する最中に放置されているスクーターを発見し、カギがついたままのものを拝借することにした。さすがに自転車の二人乗りでここから数十Km、しかも山道で荷物もある状況は無理がある。非常事態であるから・・・などという言い訳は敢えてするまい。もし無事に戻ってこれたら再び元の場所に戻すことを誓う。

移動手段を人力から機関制御に変えた私たちは次に私の部屋に戻り、出発の準備を整え終わった頃には陽も昇り始めていた。寝不足な目に朝日はまぶしく、眉間が痛かった。(つづく)