KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

このブログは塩素に混ぜると危険です

先日「ブログ上の小説により名誉毀損され、100万円支払いの判決」というニュースが出ていましたが、私のブログは全くのフィクションですので、登場人物名、団体名は架空のものになっております。予めご承知置きを。

また、平日には株のブログもやっていますが、推奨銘柄は値上がりを保証するものではありませんので、投資は自己責任でお願いします。こういうのを書いておかないと訴えられたりしたら困りますからね。訴訟社会の恐ろしいところです。

そういう変な注釈は最近CMにも多いですね。「この撮影は私道で行っております」とか「ペットは生き物ですから真似しないでください」とか。そんな注釈を付ける時点でそっちに目がいきますからCMとしては終わりだと思うんですけど。

そもそもアメリカが訴訟社会で「レンジで猫を暖めようとしたら死んでしまった。説明書に猫をレンジで暖めるなとはどこにも書いてない!」とかを勝訴にしてしまうものだからおかしなことになっています。そしたら様々なケースを想定しないといけないことになり、商品の約款とかは電話帳なみのボリュームになると思うんですが・・・。商品を販売するのがバカバカしくなります。

今度から日本でも裁判員制度が始まります。果たして日本の法治はどういう方向に向かうのか注目すべきところであります。

さて、本日は日曜なので小説の日です。前回までの分は各日曜のブログを参照してください。そして来週いよいよ最終回予定であります。半年も続けるつもりはなかったんですが、長かった・・・


                         台風一過
第二十五節 愛するが故

東京に戻ってきてから、部屋でふと思ったことがある。今まではこの状態が異常だと思っていた。しかし実は世の中微妙なバランスの上にかろうじて成立していて、ある部分に少し力を加えるとその均衡は崩れ去り、一瞬にして混沌とした世界になるのではないか。そのきっかけがK=Aウィルスであっただけなのではないか?

つまりK=Aウィルスのせいで世の中がおかしくなってしまったわけではなく、ウィルスの存在を言い訳にして本性を表しているだけではないかということだ。そういう意味では今までの世界が作り物の「異常な」世界であって、今の世界が本来の姿だということもできる。

皆心の中ではいずれワクチンができあがり元通りの世界に戻る、この地獄のような世界はワクチンが完成するまでの辛抱だと考えている。人は希望がないと生きられない。この地獄のような世界が永遠に続くと感じると絶望しか残されていない。そうすると残された道は一つ、英語で言うところの「suicide」つまり「自殺」するしかない。

私も未だ生きながらえていることから、結局は大多数の部類に所属する。つまり「いつかは元通りの世界に戻るだろう」と考えているということになる。「考えている」というよりは「考えるようにしている」という言い方が正確であろう。更に言い方を変えれば「死ぬのが怖いからそう考えるようにしている」ということだ。

ここまで生きながらえたのであれば、ここでむざむざ殺されるわけにはいかない。決意を込めて勢いよく玄関のドアを開けた。

開け放った後の状況に私は少しとまどった。すぐに飛びかかるように襲われると思っていたが、ドアを開けた私の目に映ったのは全身ずぶ濡れになりながら、うつむきたたずんでいる藍の姿だった。やはり濡れて垂れ下がった長い髪が藍の表情をすっかり覆い隠している。

私は一瞬毒気を抜かれた感じになった。しばらくお互い身動き一つせず、雨の音だけが聞こえる。決意を固めた私ではあったが、襲いかかってこない相手に包丁を突き刺すことはできない。ひょっとして正気に戻ったのだろうか?さりげなく右手に持った包丁を背後に隠した。

目の前が一瞬白く光った。雷光だ。光ったと同時に落雷の音が大きく轟いた。その音に背中を弾かれたように藍が突然顔を上げ、私に襲いかかってきた!首を力の限り締め付けてくる。突然の事に私はとっさに反応できなかった。

藍の口元が笑っているように歪んでいる。ようやく目的を達成できる者の喜びだ。その青白い顔には無数の切り傷があり、絹のような藍の顔に大小赤い線が引かれている。唇は対照的に薄紫色に浮かんでいる。

この期に及んで尚私は躊躇った。人を刺した経験などない。スーパーで買ってきた鶏肉でさえ切るのは嫌だ。いくらウィルスに冒されているといっても人間だぞ?まして愛している人、いや愛していた人を・・・。禁忌を犯す嫌悪感が心中にわだかまったが、首を締め付ける藍の手を振りほどこうにも簡単に振りほどけない。肺に酸素が十分に行き届かず、次第に力が抜けてきて、包丁を取り落としそうになる。

これ以上躊躇っている余裕はなかった。私はできる限りの力を込め、藍の腹部に包丁を突き立てた。その瞬間、再び落雷があり、視界は白く光る。藍の目は大きく見開き、充血した目の毛細血管まではっきりとわかった。「どうして?」「まさか?」というような表情だったようにも思える。私の手に暖かい液体が包丁の柄を伝って付着した。と同時に私の首に加わった圧迫感は和らいだ。

しかし気を緩めることはできない。私は何度も包丁を抜き刺しする。やがて藍の体は地面に倒れ込んだ。私は理性が効かなくなったように藍をめった刺しにする。それは恐怖からか、藍を早く楽にしてやりたかったのか、決意の暴走であったのかはわからない。

何度目か右手が突き出されようとしたその時、また落雷があった。その音と光の刺激で私は我に返った。赤黒い水たまりに倒れ込んだ藍。包丁が私の手から「もういいだろう」と逃げ落ち、乾いた音を立てて玄関に響いた。

慎重に私は玄関の電気を探り、スイッチを入れる。しかし、何度かの落雷によってか、ブレーカーが落ちたらしく電気は付かなかった。そのせいですぐには藍の表情を確認することはできなかった。殺しておいて何だが、藍の死に顔は笑っていて欲しかった。苦しみから解放されたように。

脱力感からへたり込むかと思っていたが、両足の関節はそれを許さないかのように曲がらなかった。暗闇の中呆然と立ちつくし、私は顔の筋肉を微妙に引きつらせながら、かつて藍だった体をしばらく黙って見下ろしていた。(つづく)