KA.Blog

株式市場で気になる銘柄をピックアップして分析、検証していきます。主に中期~長期の投資で成果を上げ、値動きを追っていく予定です。株の他にも日常の話題やコーナーで綴っていき、むさくるしくない(?)ブログにしていきたいと思っています。

あべこべクリーム

無事富山に帰ってまいりました。というわけで、今日からしばらくは富山からの発信となります。

それにしても噂は違わずものすごい豪雪!家の前には塀の高さまで積み上げられた雪が(・・;)飛行機から見下ろすと、雲もなく平和だったのは関東だけでした。富山の上空が近づくにつれ、雲の海はどんどん深くなっていくのでした。

気温も東京と5℃以上差があり、明日に至っては最高気温が1℃ですってよ!奥さん!!例年であれば2月並の気候であります。郷里を離れて12年。毎年帰っては来ますが、正月と夏休みだけなので、こんな豪雪を体験するのは随分と久しぶりで、新鮮な驚きです(××)今朝もあまりの寒さに6時に起きた後、眠れなくなってしまいました。

そんな中、最早宿題と化してしまった小説をつらつらと書き綴っていますが、設定は真夏。なんだかなーって感じです。夏の終わりに書き始めて季節はすっかり変わってしまいました。冬の女王広瀬香美が冬のバラードを夏に作って冬発売、というのを聞いたことがあり、丁度それの逆バージョンです。TUBEもそうなんですかね?そしたら丁度TUBE状態です。

さて、そんなこんなで今日は日曜なので小説の日です。前回までの分は毎週日曜のブログを参照してください。よく考えたら小説は今年ラストですね。結局まだ終わりが見えてきません・・・


                           台風一過

第十七節 道なき未知の向こう側

国道122号線を藍と二人乗りで北上する。昼間になればまたうだるような暑さがやってくるはずだが、時刻は朝8時を少し回った程度でまだ太陽が制空権を確保するに至っておらず、向かい風も清清しい。普通の休日であれば快適なツーリングという言い方もできそうだ。

だが現実はそうではない。変わらないのは気候だけだ。人間社会、いや日本だけに限定して良いのだが、不気味な程の静けさのうちに実態は混沌としていた。平日であれば文字通りトラフィックジャムといった状態の国道も、ほとんど車が通る様子はない。道路の真ん中で大の字になって寝ることのできる唯一のチャンスかも知れないが、今は勿論そんな小さな欲求を満たすために貴重な時間を費やすわけにはいかない。

真夏の真っ只中だというのに皆ウィルスを恐れ車の窓を締め切ってクーラーさえも遠慮している。外気を取り込むのが危険だからだ。そんな中、全身をさらけ出して移動する二人組みの男女は奇異に映っただろう。目撃者がいれば、の話であるが。

3時間位走ったところで休憩をとることにした。さすがに走り疲れたということもあるし、スクーターの燃料も欲しい。当たり前ではあるがこんな状況下で商売に励むような物好きはいないから、普通のガソリンスタンドではなくセルフタイプのスタンドを探す必要がある。幸い一件だけ発見した。管理人も誰もおらず、本当にセルフな状況であるが、給油できる状態にしておいてくれただけでも有難い話ではある。

給油が終わると近くの神社の境内で昼食をとる。昨晩は満足に睡眠もとれなかったし、藍の顔色もあまりすぐれない様子だ。そういう私も疲労の色は隠せない。藍も私もあまり食欲はなかったが、多少は無理してでも詰め込まないといけない。寝不足で疲労が蓄積され、栄養も摂れないとなると夏バテの一番の要因だ。

先は長い。日陰ができる境内の軒下を借り、少し仮眠を取ることにした。仮眠をとるといっても、昼の一番暑い時間帯だ。風は通るが冷涼感とは程遠い。熱帯夜以上に寝苦しい環境だが、30分程苦闘した末、藍は何とか目的を達成できたようで、寝息を立て始める。それを若干羨まし気に見つめる私。少し汗ばんだ寝顔がちょっと艶っぽいなとか思いつつ、すぐ邪念を振り払って寝てみようと試みる。

気づくと陽は天頂から少し傾き、時計は3時を回っていた。藍の方が先に起きていて、腕の日焼けを気にしている様子だった。藍は私が起き上がるのを見て
「おはよう」
と声をかける。
「日焼け止め持ってくれば良かった」
「日焼けを気にするようになれば大丈夫だな」
黙って笑顔で返す藍。ようやく少しの笑顔と元気は取り戻したようだ。私も少し安心する。

引き続き国道沿いにスクーターを走らせる。移動と給油を繰り返し埼玉から栃木へ、そして福島のとある村へと辿り着いた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。ここまでは順調だ。だが問題はここからだ。福島と山形の県境には越えられない線がある。その線はつい先日までは地図上にしか存在しなかった線で、普通の生活をしている分には何ら特別な意味を持たない線のはずだった。

ひとまずどこかで宿をとりたかったが、感染地域に指定されている福島の状況は東京と大して変わりなかった。ほとんどの宿は営業中止を余儀なくされていて、安モーテルでさえシャッターが下りて入れなくなっている。都市部より混乱の度合いは多少落ち着いていると思っていたが甘かった。民家の密集度合いがまばらな分、手当たり次第に泊めてくれるようお願いするも、玄関のドアまで開けてくれる人は中々いない。開けてくれても中まで入れてくれる人はいない。テレビの旅番組のリポーターになった気分すらするが、彼らよりも状況は悪いだろう。

数十件目にしてようやく
「隣の小屋なら空いているから」
と、玄関のドア越しに許可が出た。顔を見ることができなかったが、きっと仏様のようなご尊顔をされているに違いない。カビ臭い物置小屋だったが、人間二人分横になるスペースは十分確保できた。窓越しに見える星が異常な程綺麗だ。

藍に明日の計画を伝える。まずは引き続きスクーターで国道121号線を北上、磐梯山を右手に喜多方まで移動する。ただし国道を使うのはそこまでだ。そこからは脇の小さな道を抜け、夜になって辺りが暗くなってから飯森山の麓まで移動。それから徒歩で道なき道を踏破することになる。一番低い所でも標高1000m近くあり、また、整備されていない山の中を抜けることになるから、一晩がかりの行程になりそうだ。

「ここから先へ進むのはかなり覚悟が必要だぞ。いいな。」
「うん。どっちみち私たちに戻れる場所もないんだし、採るべき道は一つよ。それにちょっと楽しくなってきたし。」
「おいおい、ピクニックとは訳が違うんだぞ。」
「いいじゃない、そうでも思わないとやっていけないよ。」
既にふっきれた様子の藍。それとも自棄になっているのか。表情から読み取ろうにも小屋の中は真っ暗で見えないため判別がつかなかった。とりあえず明日に備えて寝ようということで、長旅の疲れもあり二人ともあっという間に眠ってしまった。

小屋が風で時々揺れたが、この時点で私たちに気付けというのは要求の高い注文だ。台風8号が日本列島に接近しているという事実に。(つづく)